AGC株式会社

AWS

ガラス溶解シミュレーションシステムの本番展開を BeeXが伴走支援〜インフラ展開自動化を実現し、 アプリケーションコードの品質を向上

業種
製造
従業員数
1000人以上

ガラス溶解シミュレーションシステムの本番展開を BeeXが伴走支援〜インフラ展開自動化を実現し、 アプリケーションコードの品質を向上

「素材の会社」としてガラス、電子、化学品、ライフサイエンス、セラミックスなどの事業領域でビジネスを展開するAGC。同社先端基盤研究所のガラスプロセス部は、ガラス溶解のプロセスにおけるシミュレーション技術の高度化を目指し、実機の状態をバーチャル空間上に再現するデジタルツイン技術を利用したシミュレーションシステムを内製開発しました。これにより、解析専任者でなくともシミュレーションが可能となり、従来2、3カ月を要していたシミュレーションが1日に短縮されました。さらに、このシステムの本番展開に向け、BeeXの伴走支援のもと、インフラ展開の自動化とアプリケーションコードの品質向上、機能開発を行っています。

課題
  • システムの本番展開に向けインフラ構築・運用面での 知見が少なくアドバイザーが必要であった
  • 本番展開に向けてシステムの品質を向上し、必須機能の追加を進めるため、チームを伴走してくれるエンジニアが必要だった
解決したこと

3 ヶ月という短期間でインフラ全体の整理と展開の自動化を実現

ソースコードの設計改善、権限機能など、これからの展開を見据えた上で必須となる機能を開発

工場の製造プロセス担当者が自らシミュレーションできるツールを作る

ガラスをはじめとした素材分野において、世界を代表するメーカーのひとつであるAGC。同社は、グループビジョン“Look Beyond”のもとでサステナビリティ経営に取り組んでおり、気候変動問題への対応として2050年までに「カーボン・ネットゼロ」の実現を宣言しています。2023年6月には、世界で初めて燃料にアンモニアを利用した実生産炉でのガラス製造の実証試験に成功。温室効果ガスの排出量削減に貢献できることを証明しました。同社の基盤技術を支えているのが、AGC横浜テクニカルセンター内に拠点を置く先端基盤研究所です。この研究所では、ガラスの溶解/成形/加工プロセス技術、分析・評価、シミュレーション技術、IT技術などの基盤技術を研究しており、このたび完成したガラス溶解シミュレーションシステムも、ここで開発が行われました。
板ガラスの製造方法のひとつに、溶融した金属の上に溶かしたガラスを浮かべて製造する「フロート法」があります。この製造方法では、ガラスを溶かすフロート窯の内部の温度や溶融ガラスの対流は、原料や耐火レンガの状態などによって変化し、ガラスの品質に大きな影響を与えることから、適切に制御する必要があります。しかし、フロート窯の内部は約1600度と極めて高温なため、物理的なセンサーなどを取り付けることが難しく、内部の状況を詳細に把握することは困難です。そこで同社は、1970年代よりガラス溶解プロセスのシミュレーション技術の開発に取り組み、現在に至るまで活用してきました。
しかし、シミュレーション技術を扱うには高度な専門知識とスキルが必要です。それゆえ、従来はガラス工場で製造プロセスを担当している担当者が、解析専任者にシミュレーションを依頼する必要があり、その際には複雑なプロセスを踏む必要がありました。先端基盤研究所 ガラスプロセス部 ホットプロセスチーム マネージャーの関大河氏は「プロセスが複雑ゆえに、結果が出るまで時間がかかる上、解析専任者の数も限られていることから、タイムリーに行うことが困難でした。そこで我々ホットプロセスチームでは、解析専任者の手を借りることなく、工場の担当者が自らシミュレーションできるツールを開発することにしたのです」と語ります。

以前より本社の情報システム部と協働・伴走型の開発支援を行ってきたBeeXをパートナーに選定

ホットプロセスチームは新たなシステムについて、先端基盤研究所内におけるHPCの分野で活用が始まっていたAWS上に構築することを決定。まず、チーム内でPoCの開発に着手し、シミュレーション実行からレポート生成までの中心機能を備えたアプリケーションを完成させました。しかし、本番展開を進めるにあたっては、インフラ面、アプリケーション面でより高度な技術が必要とされることから、開発パートナー選定に着手。かねてより協働・伴走型の開発支援を行うBeeXの採用を決めました。

「本社情報システム部に相談したところ、かねてより同部門が協働・伴走型の開発支援を受けているBeeXを紹介されました。BeeXには、過去にも本社基幹システムのAWS移行、グループ内のシステム基盤のクラウド化、各部門がAWS環境を利用するための標準カタログサービス(Alchemy、Chronos)の構築などの実績があり、近年は社内DX案件などでもご支援をいただいています。また、私たちホットプロセスチームも、2018 年ごろから情報システム部が主催するAWS活用の勉強会に参加しており、Chronosを活用して技術検証を行ってきたことから、当社の環境を熟知しているBeeXなら間違いないと判断しました」(関氏)

BeeXとの協働開発プロジェクトは2021年9月にスタートしました。「今回のシミュレーションシステムは事業部からの期待も高く、各事業部への展開に備え、インフラ、運用、アプリ全体のサービスのクオリティを高める必要がありました」(関氏)まず、12月までの3カ月で既にAWS上に手動構築してあった各サービスを読み解き、コード化(IaC)し直し、展開の自動化を進める支援をBeeXに依頼しました。「BeeXのエンジニアは、このシミュレーションシステムの複雑な構成を理解し、3カ月という短期間でインフラのコード化、構築自動化を達成してくれました。この結果に改めて技術力の高さを認識しました」(関氏)

その後、2022年1月から本番展開を見据えたアプリケーションコードの設計改善に着手。保守性、品質を上げるためリファクタリングを行いつつ、本番利用に必要な権限機能など新機能の開発を協働で進め、2023年1月にサービスリリースを迎えました。「非常に複雑なシミュレーションの仕組みをBeeXは素早く読み解いた上で、ここはこういう風に書き換えたほうがいい、ここはこうした作法で作ったほうがいい、といった具合に的確なアドバイスをいただきました。これはとても頼もしかったです。BeeXとは“依頼されたことをやる”“作って終わり”のような関係ではなく、リリース後もチームメンバーと同じ目的意識を持ってサービスを開発・運用し続けられる(協働・伴走できる)パートナーだと改めて思いました」(関氏)

シミュレーションの結果取得までの時間が大幅短縮より適正な制御で生産性や品質が向上

今回リリースされたシステムは、フロート窯実機のデータを自動的に取得してシミュレーションモデルを生成するシステムと、作成したモデルを参考にオペレーション条件を任意に変更しながら実機の状態をバーチャル空間上で再現し、最適な条件を導き出すシステムの2つで構成されており(デジタルツイン)、いずれもWebアプリとして提供されます。このシステムにより、工場の製造プロセス担当者は解析専任者の手をわずらわせることなく自ら実行することが可能となり、結果を取得するまでの時間が大幅に短縮されました。「これまで結果が出るまでに、2、3カ月かかることもありました。というのも、1回実施するだけでは実際との乖離が大きいため、チューニングの作業に時間がかかってしまうからです。しかし新しいシステムでは、チューニングの作業まで自動化されているため、Webアプリの操作に15分、待ち時間が一晩と、1日あれば結果を出すことが可能です。これにより、何度も繰り返すことができるため、より適正なパラメータでフロート窯を制御することができ、製品の生産性や品質の向上に貢献できます」(関氏)
 また、誰でも利用できるようになったことで、事業部の開発部門の担当者の中にも分析できる人が増えたことも副次的な効果です。「これまで、各製造ラインの短期的な課題については、開発メンバーが検討を行ってきましたが扱える者が少なく、複数の部門から依頼が来ても捌ききれない状態でした。今回、シミュレーションができる担当者が増えたことで、開発部門の業務効率も向上しています」(関氏)
  なお、このシステムはAWSを利用していますが、Chronosがあったことで、すぐに環境を用意できたこともひとつのポイントでした。「今回のプロジェクトを進める上では、AWSのサービスを高い自由度で使えたことが大きかったですね。Chronosがなければこのシステムは成り立たなかったと思います」(関氏)

シミュレーションのディープな世界に向けて高い技術力によるサポートを期待

AGCは今後もシミュレーションシステムの運用検証を継続しつつ、多くの事業部へ横展開していく方針です。また、機能面の改善や強化を図っていくほか、機械学習技術を活用した推論の自動化などにも取り組んでいくとしています。「これまではシンプルに結果が出ることを目指して開発してきましたが、今後はよりディープな世界に踏み込んでいくことになります。私たちが実現したい未来を熟知し、メンバーと同じ視点・目的意識をもってサービスを作っていけるBeeXには、パートナーとして大いに期待していますので、持ち前の高い技術力でサポートいただけたらと思います」(関氏)

インタビューにご協力いただいた方々

  • AGC株式会社 先端基盤研究所 ガラスプロセス部 ホットプロセスチーム マネージャー
    関 大河 氏

AGC株式会社

1907年、兵庫県尼崎市にて創立。1909年に日本で初めて板ガラスの製造に成功して以来、10 0 年以上にわたる技術革新の歴史の中で培った世界トップレベルの技術を強みに、「ガラス」「電子」「化学品」「ライフサイエンス」「セラミックス」の事業領域での新た な価値創造に挑戦しています。2018 年7月1日、現在の商号に変更。独自の素材・ソリューションの提供を通じて、サステナブルな社会の実現に貢献するとともに、継続的に成長・進化するエクセレントカンパニーを目指しています。

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