VMware Cloud on AWS:根幹となる技術コンセプト3つはこれ

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VMware Cloud on AWS:根幹となる技術コンセプト3つはこれ

目次

はじめに

昨日「VMware Cloud on AWSをSAPで使うメリットとは?」と題して本ブログ上で取り上げておりましたが、今回はちょっと趣向を変えてみます。
事情通からすれば、間違いなく”Game Changer”となるクラウドサービスです。特にSAPのような「どエンタープライズ、基幹」系のエンジニアにとっては、技術的にキャッチアップ必至のトピックになることでしょう。
VMware Cloud on AWS(VMC on AWS)の実装技術の概要を理解するためには、すでにVMware社より技術概要のホワイトペーパーが公開されておりますし、今年4月のAWS SummitではTechnical Preview版のL3レベルのセッション資料が公開されており、それ以外にも今後たくさん出てくるはずなので、そちらを参照下さい。
前置きが長くなりましたが、今回は本サービスがどのような技術コンセプトをもとに作成されたかというところを掘り下げたいと思います。とはいっても普通はこのあたりは通常外部から全く見えないのですが、今回の発表にあたりVMware社の担当VPがBlogで取り上げられておりましたので、その内容を噛み砕いていきます。(原文は英語ですがこちらで、How we got hereのところです。)

はじまりのビジョン

VMC on AWSほどの大きなプロジェクトになると、当然VMware,AWS両社のトップダウンで始まっているのですが、技術サイドでは「vSphereで構築された環境をAWSが持つパブリッククラウドのインフラ上にどう持っていくか」というビジョンから始まり、「vSphereだけあるいはAWSだけで実現できるよりも大きな複合価値を提供したい」というものでした。またゴールは「生(raw)のパフォーマンス、規模、管理、ユーザーエクスペリエンスの面で妥協しない『両世界のベスト』ソリューションを作成する」ことであったとあります。

3つの技術コンセプト

1.vSphereはベアメタル上で直接実行する

ベアメタルとは、OSやソフトウェアなどがインストールされていないまっさらのサーバ、ディスクを意味します。
AWS上でのvSphere環境を実行を容易にするためのショートカットや妥協を受け入れることはできなかったとあります。面白いのは、「別のVMにネスト(Nest)する形でVMware社の主力ハイパーバイザーを実行することは喜べない」という率直なコメントがあったことです。
初心者向けに少し説明を補足すると、ネスト(Nest)するとは、ハイパーバイザーの上にハイパーバイザーを動かすことで、一般的にはNested Virtualizationと呼ばれます。AWS上でNested Virtualizationする具体例としては、こことかはAWSが提供するハイパーバイザーの上にLinux標準のKVMをNested Virtualizationしてたりします。Nested Virtualizationは多段で仮想化するため、当然パフォーマンス等でペナルティがあるため、それが問題になりにくい教育目的で学生ごとに小さな仮想マシンを大量に提供したい場合などで使われているようです。
ということで、直接実行するんだから、後はAWS基盤で利用しているベアメタルすなわち金物だけ準備すればいいかというと、当然それだけでは十分ではなかったとのこと。具体的にはvSphereが稼働するホストをAWS側で既に構築済のオートメーションインフラストラクチャに完全に統合して、VMwareが提唱するSDDC(Software  Defined Data Center)環境全体を迅速にプロビジョニングし、数分でスケールアップ(およびダウン)できるサービスをAPIを介して構築できるようにしたそうです。ここは書くと数行に収まりますが、色々な意味で大きなチャレンジになります。ネストすればAWSが持つ既存のオートメーションインフラストラクチャとの親和性は高くなりますので、新規で作り込むコストやその後の維持コストが低減されるのは明白ですが、前章で述べたゴールを両社が追求した結果ということになるかと思います。

2.vSphereホストをAWSの潤沢なネットワーク環境に完全に参加させたい

これはvSphereを実行しているベアメタルホストがAWS仮想プライベートクラウド(VPC)ネットワークに参加できるようにする技術の開発を意味しています。 ここでも、パフォーマンス、特にセキュリティの妥協はないとのこと。
クラウドコンピューティングの根幹はネットワークであることは言うまでもありません。全てのI/Oはネットワークを通じて行われる以上、ここのパフォーマンスやセキュリティについては、クラウドそものの価値を左右します。VMC on AWSでは、ネットワーク仮想化でVMware社のNSXを用いますが、その下位となるホストとAWS基盤との接続については、一切の妥協はしないという覚悟があるということになります。

3.ネイティブAWSリソースとのシームレス連携

ビジョンに「vSphereだけあるいはAWSだけで実現できるよりも大きな複合価値を提供したい」という内容がありましたが、その裏付けとなる実体をいれたかったとのこと。
vSphereワークロードには、EC2インスタンス、S3ストレージ、Redshiftクラスタ、AuroraデータベースなどのネイティブAWSリソースへのシームレスな高帯域幅、低遅延アクセスできるようにするべきだということを最終的に決めたそうで、それによって初めてVMwareおよびAWS領域にまたがるアプリケーションを構築できるということになります。これにより、アプリケーションが膨大なAWSサービスを活用する可能性が広がります。

 まとめ

前章で説明した3つのコンセプトが実装技術の中心となってVMC on AWSが”Game Changer”になると我々は信じているとのことでした。
合わせて「これはほんの始まりに過ぎない」とも。今後はVMwareとAWSは、災害復旧、地理的容量拡張とデータセンターの統合、世界各地でのサービスの追加、統合の強化など、新しい機能とユースケースのサポートを可能にするとののこと。この分野のエンジニアであればキーワードだけで大体想像がつきますね。
長文最後までお読み頂きありがとうございました。

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