導入事例エイチアールワン株式会社様

SAP ERPなど人事給与関連の業務を支えるシステムのプラットフォームにMicrosoft Azureを採用 本番環境をわずか2日間のダウンタイムで移行

200 社以上の企業に、給与計算を中心とした人事業務アウトソーシングサービスを提供しているエイチアールワン。同社は企業から受託した人事給与関連の業務を遂行する上で、SAP ERPなどのシステムを利用してきましたが、これらはプライベートクラウド上で運用してきました。しかし、固定化されたインフラ環境では新技術への対応が難しいことから、スピードに優れたパブリッククラウドであるMicrosoft Azure への移行を決断。パートナーにBeeXを選定し、本番環境、開発・ステージング環境あわせて約250 台のサーバーを移行しました。中でも本番環境は2日間という極めて短いダウンタイムで移行し、業務への影響を最小限に抑えることに成功しています。

エイチアールワンのインフラ環境に関する課題
顧客の増加に合わせ柔軟なインフラ環境を用意したい
コストをかけずに災害対策(DR)を構築したい
AIやロボット(RPA)など新たなデジタル技術へ対応したい
BeeXのMicrosoft Azureによる解決
コンピューティングリソースの柔軟な割り当てによるコストの最適化が実現
西日本にDRサイトを構築し、BCP対策が実現
運用の内製化により社内にノウハウを蓄積

顧客の増加に対応するためインフラ環境のパブリッククラウド移行を検討

「人事プロセッシングにおけるインフラ機能とプロフェッショナル・サービスの提供を通じて、顧客の安定的な事業運営に貢献する」を経営理念に、人事給与関連のアウトソーシングサービスを提供しているエイチアールワン。その顧客は大企業から中堅企業まで200社以上、ユーザー数も30万人を超えます。豊富な実績を持つ同社では、これまでの経験の中で培ってきたノウハウを活かしつつ、高品質で安定したサービスを提供してきました。

同社では、給与計算システム、勤怠管理システム、社会保険システム、通勤交通経費管理システム、タレントマネジメントシステムなどを自社のインフラ環境に導入し、顧客に代わって業務を遂行していますが、ここ最近は顧客の数が増加傾向にあるといいます。執行役員 システム事業部門の南部広樹氏は「少子高齢化で働き手が減少していく中、企業はコア業務に人員を集中するようになりました。その結果、多くの企業が人事給与系のバックオフィス業務をアウトソースするようになったため、当社においてもお客様企業の数とサービスの提供人数が右肩上がりで増え続けています」と語ります。

こうした状況に対応するためには、システムを迅速に用意し、スムーズに拡張できるインフラ環境を整えなければなりません。同社(の前身である人事サービス・コンサルティング)は、2002年の設立時に自前でハードウェアを購入し、データセンターに置いて(ハウジング)インフラ環境の運用を開始しました。2008年にはサーバーを仮想化しましたが、物理サーバーで持っていては調達のスピードや柔軟性に欠けるため、2013年に国内ベンダーが提供するプライベートクラウドに移行。ファシリティのあり方を「所有から利用」にシフトし、ハードウェア投資からの解放、保守業務のサービス化、コストの圧縮などを実現しました。

そしてさらに5年が経ち、既存のサーバーOSがサポート切れを迎えるタイミングで、同社はインフラ環境のあり方を再検討。結果、パブリッククラウドへの移行を決定しました。その理由について南部氏は「セキュリティの観点からいえば、パブリッククラウドならグローバルレベルで強化されていくメリットを享受できます。また、お客様から求められている災害対策(DR)もコストをかけずに構築可能です。さらに今後、AIやロボット(RPA)などのデジタル技術を活用していくためには、大量のデータが蓄積できる環境が必要となります。そういう意味では、コンピューティングリソースの拡張が容易なパブリッククラウドがベストだろうと判断しました」と説明します。

このほか、インフラ環境の更新が5年単位となってしまう既存のプライベートクラウドに比べて、パブリッククラウドならリアルタイムに技術の進化に追随でき、コストの最適化が図れるという点も大きなメリットでした。システム事業部門 企画室 室長 兼 経営企画部 マネージャーの佐伯真吾氏は「お客様からのコスト削減の要求に対応できることや、新たな付加価値を提供できることなどを考えると、パブリッククラウドの選択は必然的でした」と語ります。

ちなみに、同社は2012年の時点でもパブリッククラウドへの移行を検討していました。しかし、個人情報などの機微な情報を扱う人事給与システムをパブリッククラウドへ置くことに対し、顧客から不安の声が挙がったため、このときは断念したといいます。その後、IT分野におけるトレンドが変化し、パブリッククラウドで基幹系システムを運用する企業が増えたことで、顧客からの理解も徐々に高まり、今回のパブリッククラウドへの移行が実現したといいます。

「すべてのシステムをAzureに移行」唯一の提案を評価しBeeXをパートナーに選定

佐伯 真吾 氏
  • システム事業部門 企画室 室長
  • 兼 経営企画部 マネージャー
  • 佐伯 真吾 氏

パブリッククラウドへの移行を決断したエイチアールワンでは、移行パートナーの選定に入り、RFPを作成して数社に対し提案を依頼します。ところが蓋を開けてみると、どの提案も同社の求める要件を満たさず、選定は難航を極めました。同社としては人事給与システムで利用しているSAP ERPの本番機、開発機、検証機をはじめ、さまざまなパッケージ、スクラッチで開発したシステムまで含めてすべてをパブリッククラウドへ移行し、運用の効率化とコスト削減を図ろうと考えていました。しかし当時は、パブリッククラウドへ大量の基幹系システムを一度に全面移行したケースが少なく、いずれのベンダーでも対応が難しかったのです。

こうした中、意外なところから助け船が現れました。RFPの作成に協力していたBeeXから「当社でも移行は可能です」という声があり、あらためて提案を受けたところ、その内容は同社が十分に満足のいくものでした。そこで同社はBeeXをパートナーに選定したのです。
「他のベンダーの提案は、一部にプライベートクラウドを残しつつハイブリッドクラウドで構築するといったものばかりでした。そうした中、唯一すべてのシステムを移行できると提案してくれたのがBeeXだったのです」(佐伯氏)

クラウドサービスについては最終的にMicrosoft Azureを選定しました。その最大の理由は、DRサイトを国内で構築する必要があったからだといいます。システム事業部門システムソリューション部 部長の関本誉志氏は「当社のお客様のほとんどは、データセンターを国内に置くことを条件にしています。パブリッククラウドを検討した2016年当時、国内に複数のリージョンを持っているサービスはAzureのみでした。加えて、Microsoftからも全面的な協力を得られる目処がついたこともあり、Azureを選択することにしたのです」と語ります。

「わずか2日間というダウンタイムで約120台の仮想サーバーをAzureに移行

エイチアールワンのAzureへの移行プロジェクトは、まず2017年7月から9月までの3カ月で概念検証(PoC)を実施し、大規模システムの稼働を確認。その後、BeeXとの契約を経て、2017年12月から本格的なスタートを切りました。

関本 誉志 氏
  • システム事業部門
  • システムソリューション部 部長
  • 関本 誉志 氏

同社とBeeXは、プロジェクトをフェーズ1/フェーズ2 の2つの期間に分けました。まずフェーズ1(2017年12月~2018年3月)では開発・ステージング、続いてフェーズ2(2018年4月~2019年2月)で本番環境のSAP ERPを含めたすべてのシステムの移行作業と、DR環境の構築作業を実施しました。移行対象となった仮想サーバーの台数は、開発・ステージング環境、本番環境のそれぞれが約120台ずつ、合計約250台です。

同社がフェーズ1で開発・ステージング環境を先行して移行した理由は、スケジュール上の都合に加え、業務への影響が少ないシステムでノウハウを蓄積し、本番環境に備えるためだったといいます。このときは約120台の仮想サーバーをオンラインで移行し、計画通りに完了させることができました。

「移行専用のネットワーク回線を新たに敷設するなど、物理的な手間はかかりましたが、既存システムを稼働させたままバックエンドで五月雨式に移行でき、何とかスケジュールに間に合わせることができました。特に、Azure標準のサーバー移行ツールであるAzure Site Recovery(以降、ASR)の有効性が確認できたことは、フェーズ2で本番環境を移行する上で大きな意味がありました」(関本氏)

フェーズ2における本番環境の移行は、同社とBeeXの間で密にコミュニケーションを取りながら慎重に進めました。その中で同社が特にこだわったのが、3日間のダウンタイム(システム停止時間)で全システムを一括移行することです。その理由について佐伯氏は「当社の場合、月末から月初めにかけて給与計算業務が集中するため、システムを止められるのは事実上2月中旬の3連休に限られていました。そこでBeeXには無理を言い、3日以内のダウンタイムで移行を完了させるプランを考えていただきました」と説明します。BeeXでは当初、複数の期間に分けて実施する五月雨式の移行を考えていましたが、上記の要望を受けて移行の設計と検証を行った結果、1日少ない2日間での一括移行が可能と判断。余った1日を予備とし、3連休での移行の実施に踏み切りました。

この短期間の移行の裏には、アプリケーションサーバーなど更新頻度の低いサーバーを事前に移行し、当日移行するサーバーの台数を最小化したこと、移行作業を自動化(スクリプト化)したこと、移行作業をテンプレート化したこと、プロジェクトチーム内における分業体制を確立したことなど、さまざまな工夫がありました。また、本番前のリハーサルは同社のエンドユーザーのサポートも受けながら実施し、問題点をあぶり出すことも行っています。こうした取り組みもあって、移行は無事完了。2日間で約120台(SAPシステムとしては11システム34インスタンス)の仮想サーバーをAzureへ移行することに成功しました。なお今回の移行に合わせ、SAP ERPのサーバーとDBのOSをWindows Server 2008 R2/SQL Server 2008 R2からWindowsServer 2016/SQL Server 2016へそれぞれアップグレードしています。

移行プロジェクトスケジュール概要

移行プロジェクトスケジュール概要

インフラ環境全体でのコスト削減を見込む運用の内製化により自社にノウハウを蓄積

Azureへの移行による効果ですが、まず挙げられるのがインフラ環境にかかるコストの削減です。開発・ステージング環境については、使わないときはサーバーを停止させておき、必要なときに立ち上げることが可能になりました。また、顧客の増加についても、サーバーリソースの追加が容易になり、スピーディかつ柔軟な対応が可能になった上、サーバーの構築費用がなくなり、初期コストが軽減されました。エイチアールワンではまだ定量的な測定ができていませんが、想定通りに行けばインフラ環境全体でのコスト削減が見込めるとしています。運用面は、以前のプライベートクラウドでは外部のベンダーにアウトソーシングしていた領域の多くが自社での対応に切り替わりました。そのため業務の負荷は増えているものの、今後は運用の内製化に舵を切り、自社にノウハウを蓄積していくことを構想しています。「以前はベンダーに運用を丸々任せていたおかげで、自分たちで手を出したくても出せず、ちょっとした対応に2週間近く要することもありました。これを内製化することで、かゆいところにも手が届くようになり、欲しいリソースが欲しいタイミングで入手できるようになります。また、社内のエンジニアも最新の技術に触れることでモチベーションアップにつながり、新たなサービスの構築につながっていくことが期待されます。今後は若手社員を教育しながら、技術レベルの向上を目指していきます」(関本氏)

DRについては、Azureの西日本リージョンにDRサイトを構成し、BCP対策を実現しています。有事の際は本番環境を西日本リージョンにASRでフェイルオーバーすることで、業務の継続が可能となりました。

システム移行方式概要図

システム移行方式概要図

システム構成概要図

システム構成概要図

RPAによる業務の効率化やAIによるHR TechにAzureを活用

南部 広樹 氏
  • 執行役員
  • システム事業部門
  • 南部 広樹 氏

エイチアールワンでは、今回の移行で獲得したノウハウを活かし、Azureの活用範囲を拡大。基幹系システムだけでなくその他のシステムの基盤や社内のOAシステムの基盤として利用していく構想を描いています。

「今後はオープンなシステムと連携しながら、Azureを中心としたエコシステムを形成していきます。これまで人が対応してきた事務処理などをRPAに代行させることで生産性を高め、業務の効率化につなげています。また、膨大な人事関連のビッグデータとAI技術を組み合わせて様々な人材分析を行うHR Tech にもAzureを活用できないか考えています」(南部氏)

移行プロジェクトでパートナーを務めたBeeXについては、どんなトラブルに対しても逃げずにまじめに取り組む姿勢と、2日間のダウンタイムで本番環境の移行を成し遂げた技術力、Microsoftとの調整力などを評価。今後もシステムの刷新や技術者への教育・サポート、運用効率化に向けた提案などの面で期待を寄RPAによる業務の効率化やAIによるHR TechにAzureを活用せています。
「今回のプロジェクトは基幹系システムのAzure移行が主目的で、SAP ERPのアプリケーションに手を加えることはしませんでしたが、今後は2025年のサポート切れに備え、SAP S/4HANAへの移行も検討していきます。その際には、PoCやアセスメントを含めてご協力いただきたいですね」(関本氏)

人事業務のプロフェッショナル集団として業界の先頭を走るエイチアールワン。BeeXの支援によって実現した新たなインフラ環境は、同社の今後の成長を支える存在になりそうです。

エイチアールワン株式会社 会社紹介
「人事業務のインフラ」企業となることを目的として設立された人事サービス・コンサルティング株式会社と、三菱商事人事部から人事アウトソーシングを主要業務として分社化されたヒューマンリンク株式会社の人事給与アウトソース事業部門が、2009 年に事業統合し、誕生しました。従来のアウトソーサーにはないスケールメリットと、蓄積された経験を活かした高品質なサービスを提供し、日本のBPOマーケットの成長促進を目指しています。
  • SAP は、ドイツおよびその他の国々におけるSAP SEの登録商標です。
  • その他記載されている、会社名、製品名、ロゴなどは、各社の登録商標または、商標です。
  • 記載されている企業名および担当者の情報は取材当時のものです。

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