EMデバイス株式会社

AWS

SAPシステムのクラウド移行により制約あるハードウェア運用から解放 / 処理スピードが劇的に向上し、ITインフラにまつわるコストも半減

業種
製造
従業員数
1000人以上

SAPシステムのクラウド移行により制約あるハードウェア運用から解放 / 処理スピードが劇的に向上し、ITインフラにまつわるコストも半減

宮城県白石市に本社を置き、電気・電子回路の制御に使われる「リレー」の製造・販売を手がけるEMデバイス。同社は基幹システムとしてSAP ERPシステムを長年にわたって使い続けてきましたが、サーバーの保守切れを契機に、アマゾン ウェブ サービス(AWS)への移行を決断。BeeXの支援のもと、約1年で移行を完了。制約あるハードウェアの運用から解放され、処理スピードの向上やITインフラにまつわるコスト削減などの効果を得るとともに、BeeXのマネージドサービスを採用したことで、運用監視レベルの向上も実現しました。

課題
  • 基幹システムのSAPシステムが稼働するサーバーの保守切れが迫る
  • 基幹システムの担当エンジニアが少ないため、限られた人的リソースを有効活用したい
  • システム全体の処理スピードを向上させたい
解決したこと
  • 物理サーバーによる運用がなくなり、開発者の管理負荷が軽減
  • BeeXのマネージドサービスの活用で、より高いレベルの運用監視を実現
  • ITインフラにかかるコストを3分の2程度に圧縮
  • バックアップやデータのダウンロードにかかる時間が大幅に短縮される

限られた人的リソースの有効活用を目指し
基幹システムのクラウド移行を決断

自動車向けのパワーリレー、通信・計測機器や医療機器など電子機器向けのシグナルリレーの製造を手がけるEMデバイスは、フィリピン、ドイツ、米国、中国、香港に拠点を置き、「NEXEM」のブランドを世界に向けて展開。小型で高性能、高信頼性の同社の製品は、グローバル市場でも高いシェアを獲得しています。

同社で生産管理、販売管理、在庫・購買管理、会計などの基幹業務を担うシステムは、前身であるNECトーキンが2002年にSAP ERPシステム(SAP R/3 4.6C)を導入したのがベースになっています。コーポレート本部 情報システム部 部長の清川敦之氏は「このシステムは、2017年に当社がNECトーキンから分社・独立する際、その基幹システムから当社の業務領域を切り出して移設したSAP ERPシステムで、国内のデータセンターで運用してきました。SAP ERPシステムは、日本本社、フィリピンの生産会社、海外の販売会社の3つがあり、それぞれを個別のインスタンスで運用していました」と語ります。

その後5年近くが経ち、サーバーのサポート切れが迫ってきたことで、同社はSAP ERPシステム のクラウド移行を決断します。その理由についてコーポレート本部 情報システム部 マネージャーの今野光宏氏は「当社の場合、基幹システムの担当エンジニアが2、3名しかいません。そこで、限られた人的リソースを有効活用すべく、ハードウェアの調達・運用の手間がかからなくなるクラウドへの移行を決めました」と説明します。

バージョンはそのままにAWSへ移行
パートナーには過去の実績などを評価しBeeXを選定

こうして基幹システムのクラウド移行に着手したEMデバイスですが、諸般の事情により既にSAPシステムの開発機をAWSへ移行していたこともあって、本番環境についても同様にAWSへ移行することにしました。そこで同社は2021年秋、複数のベンダーに提案を依頼。検討の結果、BeeXを移行パートナーに選定しました。「開発機のAWS移行は2018年のときでしたが、その際もBeeXに支援いただきました。その実績があったことに加え、当社のシステムをよく理解していること、コスト的にも納得できるものであったことから、本番移行もBeeXにお願いすることにしました」(今野氏)

移行に際しては既存のR/3 4.6CからECC6.0へのバージョンアップも検討したものの、コスト面や作業負荷などを考慮しR/3 4.6Cを継続して利用することを選択しました。
「いわゆる2027年問題に対応するため、S/4HANAにコンバージョン(ブラウンフィールド)するなら、ステップとしてECC6.0へのバージョンアップが必要ですが、現行システムをバージョンアップするだけでは、あまりメリットを感じられませんでした。そこで、将来のS/4HANAの新規導入(グリーンフィールド)や他製品への切り替えも視野に入れつつ、とりあえずはR/3 4.6Cのまま移行し、延命を図ることにしました」(今野氏)

移行プロジェクトは2022年7月にキックオフ。設計、初回移行、リハーサル、本番移行と段階を踏んで進んでいきました。この際、システムの停止期間を極小化するため、海外の販売会社向け、日本本社向け、フィリピンの生産会社向けと順を追って移行。それぞれ1カ月ずつ間を空けて安全性も確保しています。本番移行は、現行の本番機からデータをエクスポートし、新たな本番機にインポートする流れで実施しました。「本番移行時のダウンタイムは海外の販売会社が1.5日、フィリピンが3日、日本が1.5日と、短時間で完了させることができました」(今野氏)

さらに今回は、周辺システムのEDI、インターネットメール、保守分析サーバー、プリントサーバーなどもAWSに移行。サーバー OSもSolaris10からSUSELinux Enteprise 11へ変更しています。これらの作業は2023年8月に完了しました。
「EDIの移行の際には出口の変更が発生しましたが、BeeXの支援もあり、問題なく乗り切ることができました。また、プリンターの出力方法も変更しましたが、疎通確認はスムーズに進みました」(今野氏)

移行で苦労した点では、ユーザーへの受け入れテスト(UAT)が挙げられるといいます。コーポレート本部 情報システム部の齋藤奈美氏は「海外の販売会社、フィリピンの生産会社、日本本社のユーザーに疎通確認をしてもらうため、リハーサル環境を用意し、事前にシナリオを用意した上でテストしてもらったのですが、関係者が多いためスケジュールの調整やタイミングを決めるのに苦労しました。現場のスタッフでなければテストできない機能については、工場まで直接出向いて結果を見せてもらいました」と振り返ります。

なお今回は移行に合わせ、AWSの標準機能を使用したバックアップ環境の構築や運用の自動化を実施したほか、監視環境の構築、ログの可視化なども行っています。プロジェクト全体について清川氏は「SAP ERPシステムの移行においてはアプリケーション担当のベンダーとの調整もありましたが、メンバーの頑張りもあって無事終えることができました」と語ります。


バックアップやダウンロードなどの処理スピードが向上
ITインフラにまつわるコストも削減される

今回のSAP ERPシステム のAWS移行により、当初の目標であった制約あるハードウェア運用からの解放が実現。加えて、処理スピードも大幅に向上しています。例えば、バックアップには従来5時間ほどかかっていたのですが、これが1時間以内と1/10の時間で終了するようになったため、夜間バッチが終わらず翌朝のオンライン処理に影響を及ぼすようなことはなくなりました。また、ディスクI/Oのボトルネックが解消されたことにより、データベースの性能も向上し、データのダウンロードにかかる時間も短くなりました。
「大量のデータダウンロードはあらゆる集計業務について回ります。これまでは、データのダウンロードが終わるまで業務担当者に待ってもらっていたのですが、今は一瞬で終わるので『えっ、もう終わったの?』と驚かれることも多く、目に見えて速くなったことで、ユーザーのストレスも軽減されたのではないかと思います」(齋藤氏)

また今回の導入に合わせて、BeeXが紹介した自動化ツールや、BeeXによる運用サービスも新たに採用しています。これにより、各サーバーとSAP ERPシステムの主なステータスをすべて自動で監視し、何かしらの問題があればEMデバイスの運用担当者へメールで通知されるようになりました。
「今までは別のベンダーに運用を委託していたのですが、BeeXの運用担当者に現状の監視の仕様、確認のタイミング、監視のレベルなどを見ていただき、運用レベルをより高めるための提案を依頼。期待できる内容だったことから、以後の運用はBeeXにお任せすることにしました。今後は運用コストのさらなる削減が可能になると見込んでいます」(今野氏)

経営面の効果は、クラウド化により、安定的なシステムを手に入れることができたことです。「よほどのことがない限り基幹システムは動き続けるようになりましたし、DR環境も整備されたことで災害時も数時間から1日あればシステムが復旧できるようになりました」(清川氏)

次期ERPは幅広い選択肢の中から検討
システムのさらなるクラウド化も推進

将来についてEMデバイスは、現在のSAP ERPシステムに代わる次期ERPについて、S/4HANA新規導入も含めて幅広く検討していくとのことです。「システムのクラウド化は時代の流れですので、クラウドサービスを基本に、当社の特殊な生産管理方式にマッチしたものを検討していきます」(清川氏)

実際、同社は既にクラウドベースのCRMを導入済みで、BIツールの導入も進めています。今後はAWSのサービスを活用しながら、さまざまな業務改善に取り組んでいく方針です。
「今回AWSを使ってみて、敷居の低いサービスであることが分かりましたので、AWSについて学びながら活用の範囲を拡げていきたいと思います」(今野氏)

今回のプロジェクトにおけるBeeXの対応について、今野氏は「BeeXにはプロジェクト全体を引っ張っていただきました。私たちのやりたいことを丁寧にすくい取ってもらい、困ったときには親身になって対応いただきました」と述べ、齋藤氏も「BeeXとは開発機の移行のときからのお付き合いになりますが、何か相談すると『こうしてはどうですか』とすぐにアドバイスがすぐに返ってきて、非常にやりやすかったですね」と評価します。

今回のプロジェクトを通して、AWSの本格的な活用に踏み出したEMデバイス。同社は今後もBeeXとのパートナーシップのもと、業務の改善活動に取り組んでいきます。

インタビューにご協力いただいた方々

  • コーポレート本部 情報システム部 部長 兼 ものづくり基盤本部 本部長
    清川 敦之 氏
  • コーポレート本部 情報システム部 マネージャー
    今野 光宏 氏
  • コーポレート本部 情報システム部
    齋藤 奈美 氏

EMデバイス株式会社

1955年、日本電気株式会社 通信事業部が電話交換機の基幹部品であるワイヤスプリングリレーの製造を開始したのをスタートに 、電 気・電 子 回 路 の 制 御 に使 わ れる「 リレー」を作り続けてきたエレクトロメカニカル・デバイスメーカー。2017年にNECトーキンから分社・独立、現在の社名となった。小型で高性能、かつ信頼性の高いリレーを年間数億個生産しており、グローバル市場でも高いシェアを誇る。「『ひと』と『あらゆるもの』をつなぎ、豊かな暮らしの実現に貢献する」という経営理念のもと、半世紀にわたる歴史に裏打ちされた技 術力で、顧客からの期待に応え続けている。

※ SAP は、ドイツおよびその他の国々におけるSAP SEの登録商標です
※ その他記載されている、会社名、製品名、ロゴなどは、各社の登録商標または商標です。
※ 記載されている企業名および担当者の情報は取材当時のものです。
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※ アマゾン ウェブ サービスおよびAWSは、米国その他の諸国における、Amazon.com, Inc.またはその関連会社の商標です。

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