YKK株式会社

AWS

SAP ERPシステムおよび周辺システムを10ヵ月でAWSへ移行 バッチ処理などにかかる時間が半減、 インフラの保守コストも3分の1に

業種
製造
従業員数
1000人以上

SAP ERPシステムおよび周辺システムを10ヵ月でAWSへ移行 バッチ処理などにかかる時間が半減、 インフラの保守コストも3分の1に

ファスニング商品のリーディングカンパニーとして、世界約70カ国/地域で事業を展開するYKKグループ。グループ共通の人事・経理システムとして、10年以上にわたりSAP ERP(ECC6.0)をオンプレミス環境で運用してきた同社ですが、サーバー OSとデータベースのサポート切れを契機に、アマゾン ウェブ サービス(AWS)への移行を決断。BeeXの協力のもと、数TBの巨大データを含むSAP ERP本体に加え、SAP PI、SAP EP、SAP TREX、SAP EPなどのSAPシステム、帳票やジョブ管理などの周辺システムなど、数多くのシステムの移行を成功させました。これにより、バッチ処理などにかかる時間が半減したほか、インフラの保守コストも3分の1に削減。プロジェクトのメンバーも、AWSに関する経験とノウハウを取得することができました。

課題
  • リソースの枯渇により作業に制限、効率悪化やタイムアウトも発生
  • クラウド移行により拡張性あるインフラを確保したい
  • 社内の人財にクラウドにまつわるノウハウを取得させたい
解決したこと
  • バッチ処理などにかかる時間が従来の半分に短縮
  • 保守コストが3分の1に削減され、業務の成長に耐えうるインフラ基盤が実現
  • プロジェクトメンバー全員がAWSに関する経験とノウハウを取得

10数年利用してきたオンプレミス環境にさまざまな問題スケーラブルなクラウドへの移行を決断

富山県黒部市に製造拠点を置きグローバルにビジネスを展開するYKK。同社は2009年に人事システム、2012年に経理システムとしてSAP ERPを国内に導入。2013年から経理システムの海外展開を開始し、2020年までに61カ国で稼働中です。 グループの管理系システムを運用している情報システム部 共通業務システムグループ長の大久保利佳子氏は「人事システムは法対応、経理システムは海外展開とガバナンス強化を主たる目的としてSAP ERPを採用しました」と語ります。

同社はこれまでSAP ERPをオンプレミス環境で運用してきましたが、本稼働から10数年が経過し、さまざまな問題が出てきました。この点について共通業務システムグループの本島正樹氏は「経理領域ではリソースの枯渇により、会計伝票など大量のデータを抽出したいときも件数に上限を設けざるを得ず、作業の効率が悪化したり、処理中のタイムアウトが発生したりしていました。人事領域でも処理の遅延が発生し、夜間バッチが間に合わずオンラインスタートが遅れることがありました」と説明します。

そこで同社は、サーバー OSやデータベースがサポート切れを迎えることを契機に、クラウドへの移行を決断。共通業務システムグループの秋元紀英氏は「クラウド移行の目的には、インフラの拡張性を確保することに加え、社内の人財がクラウドにまつわるノウハウを取得し、技術力の底上げを図ることもありました」と語ります。

提案の内容、ロジカルかつ誠実な説明、スピーディで質の高い受け答えを評価しBeeXを採用

YKKはSAP ERPの移行先にAWSを採用しました。その理由について大久保氏は「迅速なデジタル化や顧客との連携強化にクラウドの利用が必須であることから、情報システム部ではクラウドファーストを方針として掲げています。これに合わせ、YKKグループでは標準クラウドとしてAWSの利用が進んでおり、SAPシステムの基盤にAWSを選ぶのは必然でした」と説明します。

移行のパートナーについては、2021年10月に複数社へRFPを送付。4社から届いた提案について、要件への適合度、コスト、納期、体制、将来性、プレゼンなどの項目を点数化し、総合得点の最も高かったBeeXを選定しました。
「総合得点がトップなことに加え、説明がロジカルかつ誠実だったこと、AWSに移行した後の使い方の提案により、将来の方向性が見えたことが決め手となりました」(秋元氏)「提案の内容が具体的でした。受け答えもスピーディで質が高く、プロジェクト開始後もしっかり伴走していただけると確信しました」(本島氏)

プロジェクトは2022年4月にキックオフ。要件定義・設計、構築、テスト、総合テスト、移行リハーサルなどを経て、10カ月後の2023年2月末に本番移行を実施しました。これは数TBの巨大データを含む複雑な移行になりましたが、2日間のダウンタイムで計画通りに完了。本稼働の開始後も大きなトラブルはなく、安定した運用が続いています。「移行リハーサルを2回実施し、入念に確認したことが成功に繋がったと思います」(秋元氏)

移行ツールについてはAWS標準のAWS MGNを利用する方針でしたが、既存VPCの設定の都合で使えないことが判明。急きょ旧サービスのCloudEndureを使って初回の移行を実施し、その後あらためてAWS MGNが利用できる環境を準備することにしました。
「AWS MGNが使えないことがわかったときは非常に焦りましたが、BeeXの提案により無事解決することができました」(秋元氏)

今回は、ワンインスタンスで61カ国に提供している経理システムのインフラを移行したことから、拠点間接続の切り替えも多数発生しました。時差や環境も異なる環境でのテストや本番移行には苦労が多かったといいます。「各国の担当者とのコミュニケーションや日程の調整に苦労しましたが、細かく計画を立てて役割分担を決め、手順を定めてテストを行ったことなどが功を奏しました」(本島氏)

今回、同社は経理システムと人事システムのSAP ERP(本番、テスト、開発)の移行以外にも、EAIツールであるSAP PI(本番、テスト、開発)、エンタープライズポータルのSAP EP(本番、テスト、開発、品証)、検索・分類のSAP TREX(本番、開発兼テスト)を移行したほか、周辺システムとして帳票ツールのListCreater(本番、テスト)、ジョブ管理のJP1(本番、テスト)、BIプラットフォームのBusinessSPECTRE(本番、テスト)の合計26台のサーバーの移行を併せて実施しています。

また、DR環境をAWSの東京・大阪リージョンで実現しました。運用保守についても、BeeXのマネージドサービスを採用。AWSに加えてSAP Basisも対象範囲とし、これまで自社の要員で対応していた定常業務から解放されました。さらに、無人通報サービス(ApiS)も導入することで有人対応だったJP1のジョブ監視の保守コストの低減を図っています。プロジェクト全体を振り返って大久保氏は「コロナ禍、しかも雪深い冬の黒部での大規模なシステムの移行になりましたが、経営層の理解や社員の協力もあり、トラブルなく完了することができました」と語ります。

バッチ処理などが従来の半分の時間で終了
インフラ保守にかかるコストもこれまでの1/3に

今回の移行により、適切なサーバーサイジングに加え、SAP ERPのスペックやパラメータの調整が可能になり、各システムのパフォーマンスは大幅に向上。バッチ処理やオンライン処理の一部は、既存環境に比べて半分の時間で終了するようになりました。「取引先から大量のデータを受け取り、会計伝票に転記して処理するといったトランザクションが、従来は約1時間かかっていたものが30分程度で済むようになりました。オンライン処理についても同様で、10分が5分になったものもあります。全体的に業務効率がアップしたことは間違いないでしょう」(本島氏)

また、基幹システムの安定稼働やIT投資の最適化などが実現し、インフラ保守にかかっていたコストが従来の1/3程度に削減できました。さらに別の効果として、スケーラビリティの改善により、業務の成長に耐えうるインフラ基盤を手に入れることができました。「これまで外部に頼っていたインフラの運用をAWSで“手の内化”することで、自律的なコントロールが可能となり、メリハリを付けたIT運用やセキュリティコントロールが実現しました」(大久保氏)

加えて大きなメリットとして、BeeXの伴走支援を受けながらプロジェクト参加メンバーの一人ひとりがAWSでのシステム構築を経験し、ノウハウを取得できたことも挙げられます。「インフラの担当者だけでなく、アプリケーション側のメンバーにもAWSの本番環境上にサーバー(Amazon EC2)を立てたり、アプリケーションをインストールしたりと、各種作業を体験してもらいました。そのおかげか、プロジェクトメンバーの全員がAWS認定クラウドプラクティショナーの資格を取得。SAP ERP以外の周辺システムの移行は、内部のメンバーだけで実施することができました」(秋元氏)

SAP ERP以外のシステムもAWSへ移行
データの利活用による社内DXの推進も視野

YKKは今後、SAP ERP以外の業務系システムについてもAWSへの移行を進めており、すでに別のシステムについてもAWSの構築を内製で行っています。加えてデータの利活用も検討中で、秋元氏は「データウェアハウスなどに蓄積したデータを分析し、業務や経営にフィードバックしながら社内DXに貢献していきます」と語ります。

今回の移行におけるBeeXの対応について、大久保氏はその提案力やプロジェクト管理力を称賛。「今後もクラウド移行やシステム構築などで、さまざまな知見をお借りできればと思います」と述べ、本島氏も「BeeXはYKKが担当する部分も含め、プロジェクト全体の成功を常に意識して、柔軟かつ最適なフォローをしてくれました。最初から最後までお互いの信頼関係が崩れることなく維持できたことが、今回の移行の成功要因だったと思います」と評価します。加えて秋元氏は、「BeeXは技術力と課題解決力が非常に高いですね。またサポートについても、さまざまな面でBeeXの高品質なマネージドサービスに助けられました。従来の有人監視をBeeXの無人通報(ApiS)に切り替えて1年たちますが、高い品質に満足しています。将来的にはSAP ERP以外の領域でも活用していきたいと思います」と語ってくれました。

共通業務システムグループは、今回のプロジェクトを通じてメンバーの多くがAWSの実践的な知識を得ることができました。同グループは今後もクラウドシフトを推進しつつ、業務オペレーションの標準化や自動化などの課題に取り組んでいくことでしょう。

インタビューにご協力いただいた方々

  • 情報システム部 共通業務システムグループ長
    大久保 利佳子 氏
  • 情報システム部 共通業務システムグループ
    秋元 紀英 氏
  • 情報システム部 共通業務システムグループ
    本島 正樹 氏

YKK株式会社

1934年創業。以来、創業者・吉田忠雄の他人の利益を図らずして自らの繁栄はないという企業精神「善の巡環」 を事業活動の基本としてものづくりを追求し、約70カ国/地域で事業を展開しています。現在は、第6次 中期経営計画(2021年度~2024年度)のもと、「Technolog y Oriented ValueCreation(技術に裏付けられた価値創造)」をビジョンに掲げ、持続可能な社会の実現に向けた創造力の実現を目指しています。

※ SAP は、ドイツおよびその他の国々におけるSAP SEの登録商標です
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