2017 SAPPHIRE NOW クラウド関連の発表まとめてみた。

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2017 SAPPHIRE NOW クラウド関連の発表まとめてみた。

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今年もSAPPHIRE NOWの季節がやってきました。今回は5月16日~18日まで米国フロリダ州オーランドで開催されました。SAP社から様々な発表があるのはもちろんのこと、各パートナーからもSAPPHIRE NOWにあわせて数多くの発表が行われました。情報が五月雨的に流れておりましたので、特にクラウド関連の発表について、各社の記事からまとめてみました。

Amazon Web Services

まずはAWSです。
AWSさんからは、今回のタイミングでまとめたプレスリリースは見つけられませんでしたが、このタイミングで発表されたNewsを2つとりあげたいと思います。

1.4TB~16TBのメモリ搭載インスタンス発表

https://aws.amazon.com/jp/blogs/news/ec2-in-memory-processing-update-instances-with-4-to-16-tb-of-memory-scale-out-sap-hana-to-34-tb/
いままでAWSで提供されるインスタンスの最大搭載メモリ容量はx1.32xlargeの2TBが最大でしたが、これが拡張されます。
まずは、今年後半にx1e.32xlargeインスタンスを利用できるようなります。このインスタンスは、従来のx1.32xlargeの2倍の4TBのDDR4メモリ、128個のvCPU(4つの2.3 GHz Intel ® Xeon® E7 8880 V3プロセッサ)、高いメモリ帯域幅、20Gbpsのネットワーク帯域幅、14GbpsのEBSへの専用スループットというスペックで、現在のx1.32xlargeの正統進化版という感じです。
また、まだリリース前ですが、既にHANAの認定も取得されていましたので、リリース後すぐに本稼働で使用することが可能です。AWSは対応が速いですね。
https://www.sap.com/dmc/exp/2014-09-02-hana-hardware/enEN/iaas.html#recordid=1871
ただし本番稼働環境としては、 OLAP (BW/4HANA & BWoH): 1.9 TB 、 OLTP (incl. S/4HANA & SoH): 2.7TBという最大サイズの制約が上記LINK先に明記されていました。(ただし、非本番環境用途では、4TBフルに使えるとありますし、liveCache (SAP HANA-integrated liveCache )やBPCもサポートされていたりと、このあたりは規模感とパフォーマンスのバランスをみつつ、さらには現場の生のニーズを拾った形となっており、玄人目線でいえばよくわかっている人がちゃんと組んでいるという印象を受けました。正式リリースまでしばらく時間がありますので、随時チェックしていきたいと思います。
なお、x1e.32xLarge以降の計画として、8TBから16TBのメモリのEC2インスタンスを提供するとのことです。こちらは、まだ詳細は明らかになっておりませんが、今後の発表が楽しみです。
なお、本項では割愛しておりますが、x1.32xlargeインスタンスを使用した最大17ノード(34TBメモリ)のスケールアウトクラスタがSAP認定取得されています。

2.SAP HANA Enterprise Cloud(HEC)のプラットフォームとしてAWSが選択可能に

こちらはAWSからではなくSAPからの発表となります。
http://news.sap.com/sapphire-now-sap-amazon-web-services-new-cloud-possibilities/
今までSAPによるフルマーネジド型クラウドサービス SAP HECは、SAPのデータセンターから提供されていました。今後、SAP HECの展開先としてAWSも選択できるようになるようです。ちなみにHECの展開先として、AWSは最初のパブリッククラウドプロバイダーとなります。
今までもパートナー自身がSAP HECを提供するというモデルはありましたが、今回の発表はSAP社自身が所有管理するSAP HECを、マネージドサービスとしてお客様に提供する際に、SAP社のデータセンター以外を選択できるようになるという点が、今までパートナー提供のHECとの違いです。
現時点でのNEWSだけでは、どのような形態・範囲で提供されるのか詳細は分かりませんが、既にAWS上に数多くのシステムを構築されている、もしくは今後展開を予定されている顧客にとって、ワンプラットフォームで展開されるメリットは非常に大きいと言えます。今後詳細情報を確認していたきたいと思います。

Microsoft Azure

マイクロソフトからもいくつかの発表がありました。
https://azure.microsoft.com/ja-jp/blog/the-best-public-cloud-for-sap-workloads-gets-more-powerful/

1.最大3.5TBメモリを搭載したのMシリーズ発表

今までAzure上で仮想タイプのインスタンスでHANAを稼働させる場合は、2015年に発表された最大メモリ448GBのGS5となり、AWSと比較すると少々物足りないスペックとなっていたのは否めませんでした。今回 AWSのx1インスタンス対抗となる最大3.5TBのメモリを搭載したMシリーズが発表されました。
まだ、「いつからリリースされるのか?」「リリース対象のリージョンは?」など詳細は不明ですが、先のAWS発表のx1e.32xlargeとならぶインスタンスが Azureでも提供されるようになり、お客様にとっては選択の幅が広がります。

2.Large Instance タイプとして20TBのメモリ搭載のインスタンス発表

Large Instanceというのが分かりづらいのですが、先のMシリーズはAzure上で提供させる他のインスタンスと同じく「仮想タイプ」で提供されるインスタンスになります。Azureでは、これとは別に物理サーバとして最大4.0TBのメモリを持つLarge Instanceというタイプも提供を行っていました。提供されるリージョンが限られている、最低利用期間がある、物理なので本番で利用する場合はHANAレプリケーションなど可用性対策を必ず実施しないとならないなど制約がありますが、大容量メモリーが必要なお客様にとっては選択肢となります。今回の発表で、今後最大20TBまで拡張されることが発表となりました。こちらも具体的な計画は不明ですし、また記載した通りの制約はありますが、AWSの最大16TBモデル同様、今までのクラウドの常識を覆すモデルになりそうです。

3.SAP HECのプラットフォームとしての取り組み

SAP社からの正式発表はAWSのみでしたが、今後Azureも展開オプションとして選択できるようになるよう準備中とのことです。

Google Cloud Platform

3月のGoogle Cloud Next’17にてHANAの認定を発表し、SAPの世界にはいってきたGoogle。本ブログでも取り上げておりましたが、今回さらに下記の発表がありました。
https://www.blog.google/topics/google-cloud/innovative-enterprise-sap-and-google-cloud/

1.Netweaverベースの稼働認定取得

3月時点ではHANA認定のみ、いわゆるPure HANA 用途での認定だけでしたが、今回新たにSAPパッケージ製品の稼働基盤であるNetWeaver認定が追加されました。追加されたことで何が変わるかという代表例として、今までJavaしかサポートされていなかったところに、ABAPが追加されたということです。
これによりS / 4HANA、BW / 4HANA、SAP Business Suite、SAP BWなどの製品が、GCP上で本稼働サポートされました。これで本格的にGCP上でSAPシステムの展開を行うことができるようになまりました。
またHANAについても、最大4ノードのスケールアウト構成がサポートされるなどの前提が拡張されました。
GCP上の認定インスタンスタイプについては以下URLにまとまっておりますので、詳細は、こちらをご参照ください
https://cloud.google.com/sap/apps/

2.Google BigQuery とSAP Analytics Cloud(旧SAP BusinessObjects Cloud) を連携するコネクタの提供

SAP Analytics CloudとGoogleのBigQuery連携が容易となるようです。クラウドを利用したより高度な発見・予測などの展開が期待できそうです。
その他Googleからは、今後Googleの機械学習サービス(TranslateやSpeech APIなど)とオープンソースのマシン学習フレームワークTensorFlowとSAPの組み合わせなど、機械学習分野での協業を進めていくことも発表されています。

SAP Cloud Platform(SAP CP)

最後に SAP Cloud platform(SAP CP)について記載したいと思います。下記のSAP Blogの記事が、SAP社からの一番詳しい内容です。
https://blogs.sap.com/2017/05/16/sap-cloud-platform-the-next-level/

従来SAPのPaaSであるSAP CPは、SAP社のデータセンターからのみ提供となっていましたが、マルチクラウド戦略がとられることになりました。3月にGoogleがGCP上で稼働する予定と発表をされておりましたが、今回、 SAP CPのAWS、Azureについてもプラットフォームとして提供されることが発表となっています。現時点の提供状況については、AWSは既に本稼働として提供可能、Azureはパブリックプレビュー、Googleはまだデモ段階のようです。(出典:ZDNet記事

SAP Help Portalに、もう少し詳しい情報が記載されています。
まず現在稼働が可能なリージョンですが、AWSはフランクフルトとバージニアになります。AzureはパブリックプレビューとしてUS Westにて稼働が可能なようです。
https://help.sap.com/viewer/65de2977205c403bbc107264b8eccf4b/Cloud/en-US/350356d1dc314d3199dca15bd2ab9b0e.html
また現在Cloud Foundry版で提供される機能についてもSAP Help Portalに記載があります。
https://help.sap.com/viewer/65de2977205c403bbc107264b8eccf4b/Cloud/en-US/7613d9ce711e1014839a8273b0e91070.html

PaaS機能をマルチクラウド戦略として展開するのは、面白い試みです。
今後の拡大やマルチクラウドならではの連携など展開が期待できそうですね。

全体を通して

今回、HECおよびSAP CPにおけるマルチクラウド化という発表がされたことが大きな変換点といえます。いままではパブリッククラウドは S/4 HANA、SAP Business Suiteなどを動作させるIaaSプラットフォームという位置づけでしたが、今後はSAPのクラウドサービスそのものを支えるプラットフォームという位置づけに進化することになります。また、これにより各パブリッククラウドベンダーが搭載するIaaS以外のサービスとの組み合わせなど、より広範囲な連携が増えてくることが予想されます。
また、AWS,Azureは大型メモリーインスタンスのリリースによりHANAへの対応強化を更に進めてきたのが印象的です。加えて今までSAPの世界には、あまり縁がなかったGCPも本格的にSAPの世界に参入することになり、いろいろと選択肢/組み合わせが増えきそうです。
今まで以上にクラウドの世界は エキサイティングな世界が広がりそうですね。
最後までお読み頂きありがとうございました。
おまけ:
来月6月6日から2日間にわたって開催される SAP TechDays Tokyo 2017 に弊社はブース出展しますが、今回ハイライトされた、SAP社のPaaS(SAP CP)とSaaS(SAP Analytics Cloud)を組み合わせたIoTデータ活用デモンストレーションを実施しますので、是非弊社ブースまでお立ち寄り下さい。

SAP TechDays Tokyo 2017出展のお知らせ(終了しました)

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