コスト管理

クラウド利用料に向き合おう

クラウド利用料に向き合おう

目次

エンタープライズ企業において、クラウドの利活用が進むにつれて必ず直面するのが、「不透明なクラウド利用料」という壁です。従来型のIT投資とは異なる、従量課金制の世界で、私たちはどうコストに向き合うべきでしょうか。

「無駄な使い方をしているのではないか」「予算の都合上、とにかくコストを削減したい」そんな悩みの裏側にあるのは、単なる金額の多寡ではなく、「管理・コントロールできていない」という不安ではないでしょうか。今回は、具体的なHow-toを考える前に、組織でクラウド利用料を管理していくにあたって最初に考えたい基本的なポイントを整理しました。



なぜクラウド利用料は「不透明」に感じるのか

冒頭で、「不透明なクラウド利用料」と表現しましたが、AWSに代表されるようなクラウド利用料の基本式は、実は非常にシンプルです。

リソースの利用量 [量と時間] * 単価

また、コスト管理を担当されている方が、対象となっているシステムを担当しているエンジニアの方でない場合、そのリソース利用が「妥当なものか」を判断する材料がありません。この「技術的複雑さ」と「担当者の役割」の乖離が、コストの不透明感を生んでいる原因の1つです。

CCoEが主導できる「単価」へのアプローチ

では、この「見えにくい」コストと、私たちはどう向き合えばよいのでしょうか。Cloud Center of Excellence(a.k.a CCoE)を設置している場合、CCoEが全体を俯瞰してコスト管理し、全体的なコスト削減を行いたいと考えているもしれません。この場合、まず手がつけやすいのは「単価」を下げるアプローチです。

  • ディスカウントオプションの活用(Reserved Instance や Savings Plans)
  • クラウドサービスプロバイダーとの個別契約によるディスカウント契約

これらは、特にコンピューティングリソースに対する非常に有効な手段です。しかし、これらには特有の性質があります。

  • 「単発」の施策である: 購入サイクルの更新を除き、一度実行すればそれ以上の削減は望めません。
  • 継続的なガバナンスが必要: 1年〜3年の長期予測に基づき契約するため、「購入したオプションが有効に適用されているか」「余剰リソース化していないか」を監視し、改善のサイクルを回し続ける必要があります。

CCoE単独では踏み込めないアプローチ

実は"単価"を下げるアプローチというのは、他にもあります。アーキテクチャを変更して、単価が低いサービスに乗り換えるという選択肢です。仮想サーバを使うのではなくて、Serverless/Containerアーキテクチャに変更するといったアプローチがあります。但し、このアプローチはCCoEが主導するには難しい領域です。各システムの担当者ではないと、アーキテクチャ変更が適切か判断することも実行することはできません。

また、「利用量」に対するアプローチもCCoEだけでは完結できません。

  • 夜間/休日など、使っていない時間帯はリソースの利用を止める
  • そもそも不要になったリソースは、削除する

これらは「手っ取り早い策」に見えますが、最終的な決定権と実行責任は各システム側にあります。どちらもCCoEからは情報提供やツールによる可視化は行えても最終決定・実行するのはやはり各システム側となります。

さらにエンタープライズ特有の課題として「個別の予算枠」の存在があります。予算内に収まっている限り、現場にはリスクを冒してまでアーキテクチャを変更するモチベーションが働きにくい、という構造的な難しさもあります。

FinOpsというアプローチ

ここまで見てきた通り、CCoEが単独で実行できる施策は実はそれほど多くありません。

そこでヒントとなるのがFinOpsというアプローチです。クラウドのコストを管理しようとする動きは、cloud cost managementやcloud cost optimizationといった様々なキーワードで議論されていましたが、最近ではFinOpsという用語で呼ぶ事が増えています。FinOpsとはFinancialとDevOpsを組み合わせた造語で、クラウドのビジネス価値を最大化するフレームワークおよび文化的なプラクティスです。Linux Foundationプログラムの FinOps Foundationが推進しています。

このフレームワークでは、FinOpsの守るべき6つの指針が掲げられています。一番最初にある指針にもある様に、役割の違うチーム間(例えば、管理者、財務、エンジニア)のコラボレーションが必要とされています。コスト管理をCCoEだけで解決しようとない、というのがポイントです。

  • Teams need to collaborate (拙訳:チーム間のコラボレーション)
  • Business value drives technology decisions (拙訳:ビジネス価値が技術的決定を推進する)
  • Everyone takes ownership for their technology usage (拙訳:全員がテクノロジーの利用に責任を持つ)
  • FinOps data should be accessible, timely, and accurate (拙訳:データは迅速かつ正確に共有される)
  •  FinOps should be enabled centrally (拙訳:FinOpsは一元的に有効化する)
  • Take advantage of the variable cost model of the cloud. (拙訳:クラウドの変動コストモデルを活かす)

「FinOpsフレームワークを適用すれば、コスト管理は完璧だ!」という事ではありませんが、これからコスト管理に取り組む方や、課題を感じてらっしゃる方にとっては、自分たちに足りないモノは何か?どういう視点の活動が必要か?を考えるベースとして参考にしたい内容ですので、ぜひチェックしてみてください。


今回のコラムでは、組織でクラウド利用料を管理していくにあたって最初に考えたい基本的なポイントを整理しました

  • クラウド利用料を難しく感じる理由
  • CCoEだけでコスト削減は完結しない
  • 考え方のヒントになるFinOps フレームワーク

クラウド利用料に向き合うということは、単に「削減する」ことではなく、「意味のある支出に変えていく」ことだと考えています。CCoEがすべてを担うのでもなく、現場任せにするのでもない。財務・経営・エンジニアリングが共通のデータを基に対話し、「そのコストはどんな価値を生んでいるのか」を問い続ける。その営みこそが、クラウドのコストマネジメントの出発点だと思います。


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