【イベントレポート】 SAP TechED Berlin in 2025 セッションレポート

この記事を書いたメンバー:

中間 知実

【イベントレポート】 SAP TechED Berlin in 2025 セッションレポート

目次

イベント全体の感想はこちらをご覧ください!

はじめに

SAP TechEdは、SAP技術者向けのカンファレンスで、より実践的で技術に特化したセッションが数多く用意されています。このブログでは、Keynoteを除いて、私が実際に参加したセッションについて簡単な概要と感想を共有します。

SAP TechEdのセッション登録と構成について

SAP TechEdのチケットを購入すると、専用ページからセッション登録ができます。「Full」と表示されていても、当日参加できることもありますが、人気セッションはすぐ満席になるため、早めの登録がおすすめです。また、ハンズオンは1人2回まで参加可能で、人気セッションのため、こちらも早めの登録が安心です。公式アプリを入れておくと「My Schedule」で予定を確認でき、とても便利です。
今回のTechEdでは、SAPのテクノロジーやソリューションを幅広くカバーする9つのトラックが用意されていました。

  • SAP Business Technology Platform—General (XP)
  • Application Development and Automation (AD)
  • Integration (IN)
  • Data and Analytics (DA)
  • Cloud Applications (CA)
  • Digital Transformation with Cloud ERP (DT)
  • Business AI and Joule (AI)
  • Business Transformation Management (BTM)
  • Customer Support and Cloud Lifecycle Management (CS)

それぞれのトラックでは、Strategy Talk、ロードマップ、ハンズオン、Deep Diveセッションなど多様な形式が展開され、最新の技術動向を学ぶことができました。私はその中でも、SAP Business Data Cloud(BDC)にフォーカスしたセッションとハンズオンを中心に参加しました。

セッションレポ

DAY1

SAP and Databricks: Real-time insights and AI without ETL
このセッションでは、BDCとDatabricksの統合について紹介されていました。Delta Sharingを活用することで、ETLを使わなくてもBDCを介してSAPデータを安全かつリアルタイムに取り出し、AI分析やデータエンジニアリング、BIなどにすぐ活用できる仕組みが実現されています。特に、SAPが強みを持つBDCのData Product機能を通じて、よりシームレスなデータ活用が可能になる点が印象的でした。このセッションを通じて、Databricksとの協業の方向性や共存のイメージがより具体的に見えてきました。

SAP Business Data Cloud: Strategy, archtecture, and vision
このセッションでは、BDCがどのようにデータプロダクトの開発やガバナンスを支援し、さらに文脈情報やセマンティクス(意味づけ)を持つデータによって、分析・AI・インテリジェントアプリケーションを支えているかが紹介されました。また、今後のアーキテクチャの方向性やデータマネジメントの重点領域についても詳しく説明があり、BDCの将来戦略が明確に示されていました。そして実は、このセッションの中でDAY1Keynoteで正式発表予定の内容をフライング発表していた部分もあり、現地ならではの最新情報を聞ける貴重な機会となりました。

The impact of SAP Businee Data Cloud on SAP Datasphere users
このセッションは、BDCの中でもSAP Datasphereにフォーカスした内容でした。BDCがSAP Datasphereユーザーにとっての位置づけや、既存のデータスタックとの関係が説明され、SAP BWとの関係性にも触れられていました。SAP Datasphereは、SAP Business Data Cloudの一部としてビジネスデータファブリックを実現する中心的存在であり、セルフサービスからBWのモダナイゼーションまで、幅広いユースケースに対応した強力なロードマップと継続的なイノベーションが紹介されました。また、SAP管理の新しいプロダクト群やBWの近代化・Databricks連携の新しい選択肢にも言及されていました。

DAY2

Operationalizing AI with SAP Databricks in SAP Business Data Cloud
こちらは、ハンズオンセッションの予定でしたが、講義の15分前に環境トラブルでキャンセルになってしまいました。その代わりに、SAPエキスパートによるデモやディスカッションが行われ、内容を深掘りする貴重な時間となりました。当初の予定では、BDC上のデータをDatabricksで機械学習モデルに学習させ、予測結果を新たなData ProductとしてBDCへ戻し、SACで可視化するというシナリオのハンズオンだったようです。予測分析だけでなく、databricks内のLLMを活用したり、機械学習をよりSAPデータに統合的に使えるようになってきている印象を受けました。

Accelerating transformation with SAP Joule for Consultants
もともとJouleに興味があったので、飛び込みで参加してみました。このセッションでは、Joule for Consultantをテーマに、コンサルタント向けのSAP Joule活用方法が紹介されていました。事例として紹介されていたのはアクセンチュアの取り組みで、同社ではDeliveryの現場でSAP Jouleを活用し、コード生成、ソース引用、ナレッジ活用などに利用しているとのこと。私たちのようにSAPパートナーとして活動している立場から見ても、SAP関連の調査には時間がかかるケースが多く(特に公式ドキュメントや構成情報の検索など)、Jouleのような支援ツールは非常に便利だと感じました。

SAP and Snowflake: Powering Your Data, AI, and Analytics Journey
DAY1のKeynoteでSnowflakeとの協業発表があった後、「何か詳しく聞けるかも?」と思い、飛び込みで参加したセッションです。内容は、SAPとSnowflakeの連携(SAP Snowflake)、そしてSnowflake側のAI関連機能について紹介されていました。SAP Snowflakeでは特に”with zero-copy”というコンセプトが強調されており、データをコピーせずにほぼリアルタイム(near real time)でAI対応のData Productを作成し、BDC内のデータより活用しやすくする方向性が示されていました。全体として、SAPとSnowflakeがそれぞれの強みを活かしながら、AI時代に向けたデータ連携を加速させている印象を受けました。

Planning and analytics: innovations powerning SAP Business Data Cloud
このセッションは、BDCの中でも主にSAP Analytics CloudのPlanning機能とAIによる拡張にフォーカスした内容でした。Seamless Planningの登場によって実現した新しい計画統合の仕組みや、Planningまわりの最新アップデートについて紹介がありました。また、AIを活用した計画支援機能として、コメント生成や数式作成のアシストなど、実際のデモを交えて具体的に解説されました。Jouleについてはリリース当初はJust Askと大きく変わらない印象でしたが、今回のセッションを通じて、コード生成や他のSAPソリューションのデータ参照など、より幅広い活用が可能であることがわかりました。また、今後、ストーリー生成機能が実装された際にはぜひ試してみたいと感じました。

DAY3

Leveraging AI to unlock value in SAP Business Data Cloud
こちらはBDCのAI活用についてのDeep Diveセッションで、ヨーロッパ最大手のファッションEC「Zalando」の事例をもとに、Knowledge Graphの活用方法が紹介されていました。Zalandoでは、AIシステムが企業データ内の「暗黙知」や関係性にアクセスできず、回答が汎用的で誤りやすいという課題が挙げられていました。その解決策として、Knowledge GraphをAIの“頭脳”として活用し、文脈を持った知識構造を提供するアプローチが紹介され、これにより、分析やサポート業務の自動化による効率化、AIを活用した新サービス開発のスピード向上、そして自動応答の精度向上による顧客満足度の改善が期待できるとのことでした。さらに、セッションではDatabricksやAI Foundation、Joule、AI Agentなどの関連技術もデモを交えて紹介され、BDCのAI領域の今後の方向性が示されていました。前日の内容と一部重なる部分もありましたが、AIがダッシュボード作成やデータ検索をより身近にしてくれるという印象を持ちました。

Saemless planning for xP&A in SAP Business Data Cloud
こちらは、BDCの中でも主にSAP DatasphereとSAP Analytics Cloudのシームレスな計画統合をテーマにしたハンズオンセッションでした。「Seamless Planning」とは、SAP Analytics CloudとSAP Datasphere間の新しいアプローチを指し、これにより、SACのモデルデータ(ファクトデータやマスタデータ)を直接SAP Datasphereに保存できるようになり、データの重複を減らしながら、Datasphereの機能を使ってリアルタイムでの計算や高度なデータ処理を行えるようになります。ハンズオンは2人1組で進められ、私はオランダのSAP Championの方とペアになり、いろいろ教えていただきながら進めることができました。 時間内に最後まで終えることはできませんでしたが、とても学びの多いセッションでした。 

最後に

3日間を通して、とても充実したキャッチアップができました。特に今回発表されたBDCとSnowflakeやDatabricksとの協業戦略や、その中のテクニカルな統合について理解が深まり、SAPが目指す方向性や強みをより明確に感じることができました。また、Jouleの出来る事の幅広さに驚き、期待が高まりました。
SAP TechEd全体テーマは「Where Ideas get real」です。直訳すると「アイディアをリアルにする場所」です。実際にこのイベントを通じてSAPの未来に向けたアイディアを沢山得ることができたと思います。この様々なアイディアがリアルになっていくことが楽しみです!

AWSブースにて弊社のロゴを発見!


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