株式会社三好不動産

AWS

75年分の賃貸管理・売買データを、「Snowflake」で生きた情報に。不動産業界のモデル企業として、社員一人ひとりがデータで語り合う組織へ

業種
不動産
従業員数
300~999人

取材にご対応いただいた三好不動産の皆様

株式会社三好不動産は、福岡都市圏を中心に不動産管理・賃貸仲介・売買仲介・資産活用コンサルティングなどを展開する総合不動産会社です。社内に蓄積した賃貸管理や売買のデータを新規事業の創出や収益向上につなげたいと考えていましたが、システムごとにデータが分散し、全社横断で活用できる環境の整備が課題でした。そこで同社は、データ管理の中心となるデータウェアハウス(DWH)に「Snowflake」を採用し、導入のパートナーにBeeXを選択しました。データ分析基盤は2026年5月に本稼働。全社員600人超が必要なデータに自らアクセスできる環境が整い、データを生きた情報に変える第一歩を踏み出しました。

課題
  1. 社内に蓄積した賃貸管理や売買のデータを、新規事業の創出や収益向上につなげたい
  2. システムの複雑化によりデータが社内に分散し、有効に活用できていなかった
  3. 分析データの抽出を担えるエンジニアが限られ、各所からの要望に対応しきれなかった
解決したこと
  1. 全社員がTableau経由でダッシュボードを利用できる環境を整え、必要なデータを自分で確認・活用できる状態に
  2. 不動産管理や賃貸物件管理のデータを「Snowflake」に集約。Tableauの描画レスポンスも高速に
  3. SnowflakeのAIアシスタント機能を活用。データ抽出の属人化を大幅に解消

社内のシステムが複雑化しデータが分散
全社横断でのデータ活用が次のテーマに

1951年の創立以来、オーナー・入居者からの信頼を強みに福岡の街づくりに取り組んできた三好不動産。全国で初めて不動産管理業を手がけたパイオニアとして、常に新しい取り組みに挑み続けています。近年は不動産の自社開発事業を積極的に推進し、木造アパート「トリファイン」、RC造マンション「ウェルス」、ホテル「ナインステイツ」、猫専用共生型賃貸住宅「ifCAT(イフキャット)」等のシリーズを展開。事業領域を着実に広げています。

こうした挑戦を支えるのがデータ活用です。取締役の笠 清太氏は「75年の歴史の中で蓄積された約4万5,000戸の賃貸管理データや年間約1,000件の売買データを生きた情報に変え、収益につなげること。それが最大のポイントです。現場のニーズや仮説に基づく検証を積み重ね、マーケットデータの開発などにつなげていくことがミッションだと考えています」と語ります。

一方、同社のデータはスクラッチで開発した不動産管理システムや賃貸物件管理用のSalesforceなどに分散し、有効に活用できていませんでした。背景にあったのはシステムの複雑化です。DX推進部 ゼネラルマネージャーの関谷 和明氏は「全社アンケートを実施した結果、システムが使いづらいのではなく、使い方がわからないという声が多く寄せられました。そこで、まずはデータ活用の体制そのものを見直す必要があると判断しました」と語ります。

こうした課題を解決すべく、同社は2024年10月にデータ分析・活用を推進する「データ解析センター」を新設しました。立ち上げを担ったDX推進部 データ解析センター シニアマネージャーの横田 寛氏は当時を次のように振り返ります。
「データを取得するには、各種システムごとにSQL文を作成する必要がありました。しかし、それができるエンジニアは社内に私一人しかおらず、各所からの要望への対応にも限界がありました。結果、データを分析できるのも一部の社員に限られ、全社で活用できる状態になかったのです。そこで、データを自動で連携・蓄積する分析基盤を整備し、誰もが最新のデータを活用できる環境を目指すことにしました」

Snowflakeを軸にしたDWHの構築を決断
パートナーには優れた提案と過去の実績を評価しBeeXを採用

当初、横田氏はAWSのAmazon RedshiftによるDWHの構築を構想し、かつてシステムのAWS移行を依頼した実績のあるBeeXに相談しました。その検討の過程で、BeeXからAIデータクラウド「Snowflake」の提案を受けたといいます。
「環境構築の多くをAIに任せられる点に加え、UI上で設定変更やスケール変更ができる操作性の高さ、保守の容易性は大いに魅力でした。そこでBeeXに簡易PoCを依頼し、操作性やETLツールとのデータ連携を確認しました。Snowflakeは、あえて最低ランクの性能設定のままでもTableauの描画が他の環境と比べて圧倒的に速く、今後の拡張性にも十分な手ごたえを得ました」(横田氏)

そこで同社はSnowflakeを軸にしたDWHの構築を決断。構築パートナーについては複数のベンダーを比較・検討した上で、あらためてBeeXを選択しました。横田氏は「BeeXの提案は、Snowflakeを中心に約100本のパイプライン構築まで含めたものでした。一方、他社の提案はパイプライン構築が数本程度で、拡張する際の大幅なコスト増が見込まれたため、将来性を考えてBeeXを選びました」と採用理由を述べ、予算を判断する立場の関谷氏も「BeeXには以前から支援を受けており、当社の業務や課題を踏まえた提案が印象に残っています。Snowflakeについては運用負担を大きく軽減できる点を評価し、ゴーサインを出しました」と語ります。

こうして、それまでの約1年間にわたるPoCなどの検討で固めた要件をもとに、2025年12月に本格的な構築に着手。半年で設計・開発・テストを終え、予定通り2026年5月1日の本稼働を実現しました。アーキテクチャは、不動産管理システムのSQL Serverと賃貸物件管理用のSalesforce、Amazon S3に蓄積した物件掲載情報をETLツールのTROCCOを経由してSnowflakeに連携し、BIツールのTableauからSnowflake内のデータを参照する構成です。横田氏は「想定以上に短期間で終えることができました」と振り返ります。

今回の構築のポイントとしては、第一に個人情報を取り扱うという同社の業務の特性を踏まえたセキュリティ設計が挙げられます。
「Snowflakeへの接続経路はTROCCOとTableauの2系統に限定しました。当初は閉域網での接続も検討しましたが、コストと現実的な接続経路の制約から、ネットワークポリシーによるアクセス制御を中心とした方針を採りました」(横田氏)

もう一つのポイントが、変更履歴を日次差分で永続的に保存する仕組みの構築です。従来のシステムは過去データを遡及する仕組みが十分ではなかったため、Snowflake側ですべての履歴を保持する構成としました。
「不動産のデータで最も重要なのは、トラブルが発生した際の過去データです。例えば、リーマンショックやコロナ禍といった局面で、不動産市場がどのように変化したのか後から検証できれば、将来の意思決定に役立てられます。そこで今回は、恒久的な履歴保持機能を持たせました」(横田氏)

なお、今回のプロジェクトはSnowflakeを担当するBeeXに加え、不動産管理システム担当、Salesforce担当によるマルチベンダー体制で進められました。
「各社が専門性を活かしながら、密に連携していただき、納期・予算とも予定通りに収めることができました」(関谷氏)

全社員600人超が自らデータにアクセスできる環境を実現
データを生きた情報に変える第一歩を踏み出す

データ分析基盤の本稼働後、三好不動産の全社員600人超がTableauでSnowflakeに蓄積されたデータにアクセスできる環境が整いました。取材時点(2026年8月)では、管理戸数や入居率などの重要指標を可視化したダッシュボードを順次公開している段階です。
「データ分析基盤の整備により、データを生きた情報に変える第一歩を踏み出すことができました。今後は、当社が保有する民間賃貸住宅マーケットのデータなどを活用し、新サービスの創出やマーケット分析データの外販など、データの価値を活かしたビジネスに発展させたいと考えています」(笠氏)

また、横田氏に依頼が集中していたSQL文の作成も、「AIが下書きし、人がチェックする」プロセスへと変わりました。データ解析センターのメンバーが自然言語で指示するとSnowflakeのAIアシスタント機能がSQLを生成し、詰まった部分や複雑なロジックのみを横田氏がレビュー・修正します。経験の浅いメンバーでも主導してデータマート(分析用のデータ群)をスピーディに作成でき、属人化の大幅な解消につながっています。

さらに、今回のデータ分析基盤の構築は、社内業務にも変化をもたらしました。経理部の協力のもと、経理データとの連携が実現したほか、総務部から従業員情報を連携したいという要望も寄せられています。
「将来的には、総務部が保有する従業員満足度のデータをSnowflakeに集約しTableauで可視化することで、部門横断で満足度向上に取り組めると考えています。手始めに、DX推進部の従業員満足度を可視化し、マネジメントに活用しています」(関谷氏)

社内のデータ活用の裾野を広げる取り組みとして、Tableauの社内ハッカソンをこれまでに2回開催。自らダッシュボードを構築して発表するメンバーは第1回の15人から第2回は25人へと増加。前回は聴講だったメンバーが発表側に回るなど、自らデータを動かす実践者が着実に増えています。第1回は審査員を務めた取締役の笠氏も、「発想面でもう一歩踏み込めると感じたので、次は自分が手本を示したい」と第2回は自ら参加。更新時の賃料引き上げを3シナリオで試算し、提案資料まで自動生成するダッシュボードを自作・公開しています。
「現在は、当社の新たな中期経営計画(2026年10月スタート)に合わせ、経営層・事業戦略・部門向けに三層構造のダッシュボードを整備しています。中計の事業戦略と日々のデータを直結させ、経営層から各部門の担当者までがレポートをドリルダウンしながら活用できる環境を早期に実現したいと考えています」(笠氏)

データの連携先を段階的に拡大
お客様にさらなる価値を提供し、会社の信頼向上につなげる

今後、三好不動産では名刺情報や経理データ、人事・勤怠データなど、生産性の可視化に必要なデータ連携の対象を段階的に拡大していく計画です。あわせて、AIエージェントとの連携や社内に散在する物件情報の名寄せにも着手しています。
「不動産事業者として価値を提供するためにはデータに基づいた意思決定が欠かせません。例えば、物件ごとにエアコンの故障が増え始める時期をデータから予測できれば、都度の修理で出張費がかさむ前に、物件オーナー様へ一括の予防保守を根拠とメリットを示して提案でき、結果として会社の信頼向上にもつながります」(関谷氏)

同社にとって今回のデータ分析基盤の導入は、単なるシステムの構築ではなく、業界のモデル企業として、全社でデータ活用の文化を育む挑戦でもあります。関谷氏は本プロジェクトでのBeeXの支援について「提案時にあらかじめ複数の選択肢を示していただいたことに加え、資料や説明も丁寧で、インフラ領域に明るくないメンバーでも導入後のイメージが持ちやすかったです」と評価。笠氏も「私が出ていく場面がほぼないほど安定した進行で、組織としての対応力の強さを感じました。今後はDXやAIをはじめ、さまざまな分野での協力をお願いします」と将来への期待を寄せています。


インタビューにご協力いただいた方々

  • 75年分の賃貸管理・売買データを、「Snowflake」で生きた情報に。不動産業界のモデル企業として、社員一人ひとりがデータで語り合う組織へ
    株式会社三好不動産
    取締役
    笠 清太 氏
  • 75年分の賃貸管理・売買データを、「Snowflake」で生きた情報に。不動産業界のモデル企業として、社員一人ひとりがデータで語り合う組織へ
    株式会社三好不動産
    DX推進部
    ゼネラルマネージャー
    関谷 和明 氏
  • 75年分の賃貸管理・売買データを、「Snowflake」で生きた情報に。不動産業界のモデル企業として、社員一人ひとりがデータで語り合う組織へ
    株式会社三好不動産
    DX推進部 データ解析センター
    シニアマネージャー
    横田 寛 氏

株式会社三好不動産

1951年創立、1955年より不動産業を開始。漁師からの相談をきっかけに、賃貸住宅経営の提案を行い、全国で初めて不動産管理業を始めました。管理戸数44,937戸(2025年10月)は九州におけるNo.1の数字であり、この安定した経営基盤を軸に、福岡都市圏に14の賃貸仲介店舗を展開しています。現在は、「超・不動産宣言」を合言葉に、福岡の住環境の質を向上させるべく、賃貸住宅の部屋探しから居住支援、土地活用、相続対策に至るまで、不動産業をさらに進化させた「資産のコンサルティング」に取り組んでいます。

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