アスクル株式会社

AWS

基幹システムをSAP S/4HANAに刷新。ビジネスを止めることなく21時間のダウンタイムで移行完了

業種
小売
従業員数
1000人以上

基幹システムをSAP S/4HANAに刷新。ビジネスを止めることなく21時間のダウンタイムで移行完了

日本を代表するeコマース企業として、BtoB向け「ASKUL」「ソロエルアリーナ」、BtoC向け「LOHACO」などを運営するアスクル。同社は2009年に基幹システムとしてSAP ERP(ECC 6.0)を導入し、15年近くにわたって利用してきましたが、ECC 6.0のサポートが終了することを機に、SAP S/4HANAへの刷新を決断。インフラにはアマゾン ウェブ サービス(AWS)を採用し、移行のパートナーにBeeXを選定しました。このプロジェクトでは、同社のビジネスを止めることなく最小限のダウンタイムで移行するという困難な要件が求められましたが、さまざまな工夫を行うことで、21時間という短時間での移行を実現しています。

課題
  1. SAP ERP(ECC 6.0)のサポート終了に伴い、SAP S/4HANAに刷新
  2. 24時間365日稼働中のECサイトは止めずに、大規模な基幹システムを24時間以内に移行したい
  3. ビジネスや業務への影響を抑えるため、移行後のデータ品質も維持したい
解決したこと
  1. 基幹システムが最新化されたことで、組織全体の業務最適化やDXのための基盤が確立
  2. 移行データ量の削減施策や入念なリハーサルを行い、わずか21時間のダウンタイムで移行を完了
  3. ストレートコンバージョンによる移行で、データ品質を維持しながら移行を完了

ECC 6.0のサポート終了を機に
最新版のSAP S/4HANAへの刷新を図る

事業所のお客様が必要な商品を、必要な量で、「明日」お届けするサービスの提供を目指し1993年3月より事業を開始したアスクル。現在は、国内最大級のeコマース事業者として、BtoBとBtoCの分野で「仕事場」と「くらし」を支えるさまざまな事業を展開しています。

同社の強みのひとつが、サービスの進化や高精度なマーケティングを可能にするビッグデータです。たとえば、同社における2006年5月21日~2023年5月20日に蓄積されたBtoB事業とLOHACO事業領域の累計オーダー数は7.4億件を超えており、これらのデータは各種施策に活用されています。また、DXへの取り組みに積極的なことも特徴で、経済産業省が選定する「DX銘柄」に2022年から3年連続で選ばれています。

さて同社では、2009年に基幹システムをECC6.0に刷新して以来、15年近くにわたって利用してきましたが、そのサポート終了が迫ってきたことから、最新版であるSAP S/4HANAへの移行を決断しました。テクノロジー本部 デジタルエンタープライズ 統括部長の小林悟氏は「当社にとって基幹システムはビジネスの根幹であり、決して止まってはならないものです。当社の基幹システムは国内でも最大級の規模で、移行は難易度の高いプロジェクトになることが予想されます。そこで、リスクを低減するためストレートコンバージョンで移行し、ビジネスや業務への影響を最小限に抑えることにしました」と説明します。

基盤については、クラウドを基本方針として検討した結果、AWSへの移行を決定しました。その理由について、テクノロジー本部 デジタルエンタープライズ デジタルエンタープライズ1 ビッグデータ マネージャーの小森学氏は「当社ではこれまで数多くのシステムをAWS上で運用してきた実績があります。また、AWS上で稼働しているフロントシステムとの連携が容易な点もメリットです。加えて、AWSは安定性が高く、扱いに詳しいエンジニアも多いため、運用面でも最適と判断しました」と語ります。

柔軟な対応と技術力の高さを評価し
移行パートナーにBeeXを選定

アスクルは、今回のプロジェクトを進める上でのパートナーとして、2018年に同社のSAPシステムにかかわり、その後の運用・保守も手がけてきたBeeXを選定しました。その決め手は、柔軟な対応と技術力の高さにあったといいます。小林氏は「何が起こるか分からないプロジェクトにおいては、柔軟かつスピーディに動ける体制が必須です。そこで、迷うことなくBeeXに決めました」と述べ、小森氏も「BeeXはインフラとBASISの移行を得意としている上、当社のシステム環境を熟知しているメンバーをアサインしていただける点が魅力でした」と振り返ります。

すべてのビジネスを止めることなく
21時間のダウンタイムでデータ移行を完了

プロジェクトは2024年3月にキックオフ。PMO、インフラ/BASIS、アプリケーションなど、それぞれの領域をマルチベンダー体制で進めていきました。当プロジェクトにおける最大の課題は、24時間365日稼働中のWebサイトを、止めることなく最小限のダウンタイムで完了させることにありました。
「当社のビジネスを支える基幹システムを止めてしまうと、社名の由来でもある『明日届ける』というお客様との約束を守ることができなくなってしまいます。それゆえ、24時間以内の移行を最優先事項とし、移行後のデータ品質も現状を維持することを必須の要件としました」(小林氏)

この難題の解決に向けて、同社とBeeXはさまざまな施策を検討。まずは、不要なデータを削除/対象外とすることで、移行するデータ量を減らしました。さらに、ダウンタイム中に移行するデータ量を最小限に抑えるため、2回に分けて差分での移行を実施。ダウンタイム前に、停止点までに発生したデータの移行をあらかじめ済ませておくという工夫を行っています。
「これらの施策により、当初は20TBを超えていたデータ量を、SAP S/4HANAへ移行直後には5TBまで削減することができました」(小森氏)

PoCを含め、リハーサルを5回行ったことも大きなポイントです。最初はデータのみ、次はデータと基盤、次は本番と同じ環境…と段階を踏み、移行にかかる時間や手順を検証しながら作業の進め方を詰めていきました。テストやリハーサル時には、環境を本番と極力近づけるため、コピーをAWS上に構築。本番相当の20TBのテストデータを用意し、I/O性能なども評価しました。データの移行時には、インターネットVPNの回線速度を最大1Gbpsまで強化し、短時間でデータが取り込めるようにしています。

稼働後の品質という意味では、サーバーの性能も重要なポイントです。テストではこまめにパフォーマンスを確認し、本番稼働後にトラブルが起こらないよう丁寧にチューニングを行いました。
一方で、テストとはいえ高スループット・低レイテンシーを確保するために12TBのAmazon EC2 ハイメモリインスタンスを採用していたため、コスト管理も重要な課題でした。「テストしていない期間はサーバーを落とす、必要なサーバーに必要なだけスペックを上げる、リハーサル後のバックアップデータは削除するなど、パフォーマンスを維持しながらいかにコストを最適化するか、BeeXにアドバイスをもらいながら、調整を重ねました」(小森氏)

こうした工夫により、同社はすべてのビジネスを停止することなく21時間のダウンタイムで移行を完了。基幹システムの移行では2~3日のダウンタイムを設けるのが一般的ですが、国内屈指のデータ量/トランザクションを誇り、業務プロセスも複雑な同社が、Webサイトを稼働させたまま1日以下という短時間のダウンタイムで正確なデータ移行を実現した今回のプロジェクトは、国内でも類を見ない取り組みとなりました。
「パフォーマンス、データやアプリケーションの品質まで含め、移行直後から安定した運用が続いています。結果として、組織全体の業務最適化やDXのための基盤が確立され、経営層からも高く評価されています」(小林氏)
システム構成図

アドオン削減によりクリーンコア化
SAP BTPの活用や業務へのAIの取り入れも目指す

アスクルは今後の展望として、アドオンの削減によるクリーンコア化と、SAPが提供する開発・拡張プラットフォーム「SAP BTP」およびAIの活用を見据えています。
「SAP S/4HANAの機能を最大限に活用するため、まずは大量のアドオンをSAP BTPに移行しSAP本体をクリーンな状態に維持。SAPBTPを効果的に活用しつつ、業務にAIを取り入れていきたいと考えています。SAP社も『Joule』などAI機能の強化を進めていますし、時代もAIにシフトしています。当社もAIを活用することで、サービスレベルを変えることなく、半分の負荷で現状の業務が回せるようにしたいですね」(小林氏)

また、同社はSAP S/4HANAに蓄積されていく大量のデータの活用に向けて、分析基盤の整備も進めていく構想です。この点について小森氏は「バッチでデータを取得するのではなく、リアルタイムにデータを収集しデータ基盤と連携。迅速な意思決定につなげていくことを目指しています」と語ります。

AWS移行後のインフラの運用・保守もBeeXに委託されており、現在も安定した運用への取り組みが続いています。今回の移行におけるBeeXへの評価について小森氏は「技術力の高いエンジニアにプロジェクトもリードしてもらい、非常に助かりました。対応も柔軟で、プロジェクトの準備段階からご支援いただきましたし、トラブルが起きたときも複数の解決策を提示してくれるので、短時間で解決することができました。今後も、システムの安定稼働と運用効率化に手を貸していただければ幸いです」と述べ、小林氏も「BeeXはSAPとクラウドの領域ではピカイチの技術集団で、人間的にも魅力のある方が多いです。何より、アスクルの業務やシステム環境をよく理解しているので、安心して任せることができました。今後は、AIを活用したインフラ/BASIS領域の運用効率化などのご提案も期待しています。」と語ってくれました。

インタビューにご協力いただいた方々

  • テクノロジー本部 デジタルエンタープライズ 統括部長
    小林 悟 氏
  • テクノロジー本部 デジタルエンタープライズ デジタルエンタープライズ1 ビッグデータ マネージャー
    小森 学 氏

アスクル株式会社

アスクルは、事業所向け通販「ASKUL」と個人向け通販 「LOHACO」を手掛けるEC企業です。全国10拠点の自社EC物流センターから、全国に「明日来る」を実現しています。 「ASKUL」ではあらゆる仕事場に向け、文具・事務用品、生活用品、家具から、製造業や建設業向けの専門用品、医薬品・医療機器などの医療材料まで、約1,400万点以上の商品をご提供。「LOHACO」では飲料・食品、洗剤・キッチン用品、医薬品、コスメなどの日用品から、ペット用品、インテリアのほか、LOHACOオリジナル商品まで、幅広いラインナップの商品をお届けしています。近年は「エシカルeコマース」の実現を掲げ、社会課題解決に向けた循環型商品の開発や商品廃棄削減への取り組みを強化しています。

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