総合化学メーカーとして、幅広い領域で事業を展開するデンカ。同社はオンプレミスで20年近くにわたり運用してきたSAP ERPについて、ハードウェアの保守切れに伴い、アマゾン ウェブ サービス(AWS)への移行を決断。運用・保守を担うパートナーとしてBeeXを採用しました。2023年5月にキックオフしたプロジェクトは、わずか8カ月という短期間でSAP ERPと周辺システムを含めたAWS移行と、インフラおよびBASIS領域の運用・保守の引き継ぎを完了。この結果、インフラにまつわるコストの見える化や負荷が軽減したほか、特定の担当者に依存しない持続可能な運用体制を実現しました。
- 課題
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- ハードウェア保守の制約を脱し、クラウド化で柔軟なIT基盤を構築したい
- 運用の属人化を解消し、透明性の高い安定した体制を築きたい
- 散在する運用ナレッジを体系化し、将来も継続できる仕組みを整えたい
- 解決したこと
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- AWS移行でコストの見える化と運用負荷の軽減を実現。実績データに基づく継続的な改善を提供
- BeeXによるMSPサービスで、SAP ERPと周辺システム運用の提供と運用標準化を確立
- 現状の徹底整理とドキュメント化により、運用の継承性と資産化を実現
ハードウェアの保守切れを機にクラウド移行を決断
運用の負荷軽減とともに属人化解消を目指す
1915年、肥料である石灰窒素の製造・販売を目的に設立されたデンカ。以後、同社は110年を超える歴史を経て、無機化学から有機化学、電子材料、樹脂加工製品、医薬品まで、幅広い事業領域を有する化学メーカーへと発展を遂げました。現在は、経営計画「Mission2030」のもと、スペシャリティ・メガトレンド・サステナビリティの3要素を備えた事業価値創造に注力。IT分野においても、デジタル技術を活用した企業変革と新しい価値の創造を推進しており、2025年12月には経済産業省の「DX認定事業者」にも選定されました。
同社は、2005年に基幹システムとしてSAP R/3を導入、2018年にはSAP ERP(ECC6.0)へバージョンアップし、外部のデータセンターで運用を続けてきました。しかし、2023年12月にハードウェアの保守期限を迎えるにあたり、SAP ERPと周辺システムのクラウド移行を決定しました。デジタル戦略部 課長の成田大祐氏は「ハードウェアの更新負荷軽減と、BCP対応が主な理由です。また、検討をスタートした2020年当時、経理部門や生産部門などから検証環境の迅速な提供を求める声が増えており、リソース調達が柔軟なクラウド基盤が不可欠でした」と振り返ります。
併せて大きな課題となっていたのが、運用の属人化です。デジタル戦略部 課長の大野仁氏は「SAP導入当初よりBASISやインフラ領域の運用を外部ベンダーに委託していたのですが、長年利用を続けていると、運用は定常的に回り、大きなトラブルも滅多に起きません。社内の運用体制は徐々に縮小され、外部ベンダーへの依存が高まっていきました」と述べ、さらに「ドキュメント類も更新されないまま残っているものが多く、仕様もバラバラでした。さらに、ファイルは各担当者の個人フォルダに保存されているなど、目的のものを探し出すのも一苦労でした。運用に慣れている担当者ならドキュメントがなくても経験だけで対応できるでしょうが、そうした方が退職などでいなくなると運用の継続が難しくなります。そこで、クラウド移行と並行して運用体制も見直すことにしたのです」と説明します。
移行後の運用・保守まで含めた一貫した提案と「寄り添う姿勢」を評価し、BeeXを選定
デンカは複数のベンダーにRFPを送付し提案を依頼。慎重な選考の結果、AWSへの移行とその後の運用・保守を包括的にサポートする「MSPサービス」を組み合わせたBeeXの提案を採用しました。
「クラウドには安定性と実績のあるAWS、パートナーは費用対効果や周辺システムを含めた移行実績、運用・保守サービスまで含めた提案等を評価しBeeXを選びました。最後の決め手になったのは、担当PMの『お客様と一緒に汗をかきながら、手を取り合って進めていきたい』という姿勢でした。単なる発注者と業者の関係を超え、共に課題に向き合ってくれるパートナーだと確信しました」(成田氏)
プロジェクトは2023年5月にキックオフ。要件定義・設計、構築・テスト、総合テスト、リハーサルなどを経て同年12月末に本番移行を実施し、2024年1月より本稼働を開始しました。SAP ERP、SAP BW、SAP PIは現行バージョンを維持する「イメージコピー」方式で移行し、OS、DB、SAPカーネルのみをバージョンアップすることでSAPへの影響を最小化。一方で、ジョブ管理、帳票、FAX、監視などの周辺システムは、アプリケーションも含めたバージョンアップとAWS移行を合わせて実施しました。
これだけのシステム規模の移行を8カ月という短期間で実現できた成功要因となったのは、体制づくりに重点を置いたことだといいます。「業務が忙しいなどの理由でキーマンがミーティングへ出てこなくなることがないよう、SAP、周辺システム、インフラなどを良く知り、意思決定できるメンバーについて、しっかり時間を確保してもらうようにしました。結果、意思決定が迅速に進み、スムーズにプロジェクトを完了させることができました。またBeeXの担当者からは、2カ月~3カ月前から『この日までに○○をやっておいてください』など具体的なタスクを知らせていただけたので、あらかじめ段取りを付けることができたのも大きかったです」(成田氏)
なお、このプロジェクトでは運用・保守の移行もポイントとなりました。既存のベンダーからBeeXへ切り替えるにあたり、現状の環境を整理した上で、周辺システムまで含めた新たな運用・保守体制を短期間で構築する必要があったからです。「現状のドキュメント類が不足していたため、既存ベンダーの担当者から詳細をヒアリングし、BeeXが分かるように説明し、運用が回る状態まで持っていくのが大変でした。あらためて調査・テストしたところ、一部に手動での対応が残っているなど、独自の運用もいくつか見つかりました」(大野氏)
特に、周辺システムのひとつであるジョブ管理については、約1万本のジョブの運用を短期間に引き継ぐとともに、24時間365日の運用体制の構築が求められ、少なからず苦労があったといいます。このシステムでは、稼働初期に特定ジョブの処理が長時間化するなどのトラブルがありましたが、BeeXの支援のもと、大きな問題に至ることなく解決することができました。「SAP ERPのBASISから周辺システムまで幅広い分野をお任せすることになりましたが、BeeXは各システム固有の環境を理解した上で運用を引き継いでくれました」(成田氏)

インフラコストの削減および可視化
運用・保守の属人化が解消され負荷も軽減
今回、SAP ERPおよび周辺システムのインフラがAWSへと移行したことで、必要に応じて検証などの環境が簡単に用意できるようになった上、ハードウェアの更新や運用の負荷がなくなりました。また、データセンターの2本のラックが不要になり、コストも大きく削減されています。さらに、インフラにまつわるコストが可視化されたことで、削減に取り組むきっかけができたといいます。
「稼働実績を踏まえてBeeXに相談したところ、長期利用を前提としたAWSのSavings Plansを提案していただき、すでに成果が現れ始めています。さらに、コストが可視化されたことで以前にも増して戦略的にコストセーブを推進できるようになりました」(成田氏)
運用・保守については、ドキュメント類や手順が整備されたことで、属人化が解消されるとともに、MSPサービスの導入により負荷も軽減されました。現在は、BeeXがAWS上のSAP ERPおよび周辺システムを24時間365日体制で監視。システムに何か異常があった際は、専門スタッフが直ちに対応。原因調査や復旧作業を実施します。
「原因不明のジョブエラーが発生した際に、BeeXのアドバイスに従って設定を見直した結果、トラブルの拡大を回避することができました。私たちの依頼に対し、BeeXはまずはすべてを受け入れた上で、できること・できないことを判断してくれるので非常に助かっています」(大野氏)
運用コストの最適化も大きな効果です。従来は運用がブラックボックス化していたため、かかるコストが不明瞭で、ベンダーに対して価格交渉もできませんでした。しかし今では、MSPサービスの利用によって実績ベースでコストを把握でき、定期的な見直しも可能になっています。
「現在は半年に1回、運用の見直しを図った上でMSPサービスの契約を更新しています。どこにどれだけお金がかかっているかはっきり分かるため、私たちも納得感を持って費用を支払うことができるようになりました」(成田氏)
クラウド環境のアカウントを一元管理し、
運用・保守はBeeXのMSPサービスへの集約を検討
デンカでは2025年4月にデジタル戦略部に「DX支援課」を新たに設立。SAPの周辺システムの活用を推進し、全社的な課題に取り組むとともに、AWSだけでなくAzureやGoogle Cloudなど、社内で個別に利用されていたクラウド環境のアカウントを一元化し、管理を強化する方針です。またクラウド関連の運用や保守については、BeeXのMSPサービスへの集約を検討しています。
「これにより、運用負荷を大幅に軽減しコストも最適化できるのではないかと見込んでいます」(成田氏)
最後に、今回のプロジェクトにおけるBeeXの支援について大野氏は「BASISやインフラに関する知識について、BeeXと共に学びながら運用を引き継ぐことができました。今後も社員への教育まで含めてご支援いただけるとありがたいです」と述べ、成田氏も「BeeXの豊富な経験と知見には幾度となく助けられましたし、私たちの要望に対する前向きな姿勢にも勇気をいただきました。技術力はもちろん、コミュニケーション力も高いBeeXと引き続きご一緒できればうれしく思います」と、BeeXへの期待を寄せました。
インタビューにご協力いただいた方々
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- デジタル戦略部 課長
- 大野 仁 氏
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- デジタル戦略部 課長
- 成田 大祐 氏
デンカ株式会社
1915年、電気化学工業株式会社として設立。2015年の創立100周年を機に、デンカ株式会社へと社名を変更しました。現在は、総合化学メーカーとして有機・無機素材から電子材料、医薬分野まで幅広く展開。2023年には経営計画「Mission2030」を策定し、「2030年までに、人財・経営価値を高めスペシャリティ・メガトレンド・サステナビリティの3要素をそなえた事業価値創造に集中する。」というミッションのもと、事業・人財・経営の3つの価値の創造に取り組んでいます。
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